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大日本印刷、凸版印刷などデジタル技術を駆使 

2008/2/28

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 ■美術鑑賞の楽しみ広がる

 デジタル技術が美術の楽しみ方をひろげる−。大日本印刷(DNP)、凸版印刷など印刷大手が本格的に取り組んでいる、デジタル技術による次代の美術鑑賞法が注目されている。このうち、DNPは東京都墨田区の「江戸東京博物館」で4月6日まで開催中の「川瀬巴水展」で、流れる音楽にデータを紛れ込ませる実験を行っている。PDA(携帯情報端末)のマイクで音楽を拾うと、液晶画面に写真や文字が現れ、展示物を詳しく解説してくれる。印刷のデジタル化を進めてきた各社の最先端技術に、楽しく接することができる。(谷口隆一)

 ≪音楽に秘密あり≫

ラジカセから流れる音楽を拾うと、PDAに絵画に関連した写真や解説が表示される。奥に見えるのは「川瀬巴水展」の展示作品「明治神宮菖蒲園」、手前のPDAに写真データがあらわれる=東京都墨田区の「江戸東京博物館」
ラジカセから流れる音楽を拾うと、PDAに絵画に関連した写真や解説が表示される。奥に見えるのは「川瀬巴水展」の展示作品「明治神宮菖蒲園」、手前のPDAに写真データがあらわれる=東京都墨田区の「江戸東京博物館」
 
 ガラスケースの中に展示されているのは、大正、昭和に活躍した川瀬巴水が残した、東京の風景をとらえた版画作品。土、日曜日には作品の手前にCDラジカセが置かれている。

 流れてくる音楽にPDAを近づけると、液晶モニターには目の前の絵に関連した写真が現れる。歌舞伎座、隅田川、増上寺…。版画に描かれた場所が、実際にはどんな風景なのかを、見比べることができる。

 流れてくるのは、キーボード奏者として知られる向谷実氏が新しく作曲した音楽。これにPDAが反応して情報を表示するのはなぜなのか。

 「秘密は音楽の中にある」。DNP情報コミュニケーション開発センターの茂出木敏雄主任研究員が解説する。

 「音楽に紛れ込ませて、耳に聞こえない音を流している。PDAや携帯電話でその音を拾って専用のソフトで変換すると、電子的なプログラムとなって情報を呼び出す」(茂出木氏)。

 DNPが開発した音楽電子透かし技術「ゲンコーダMark」。これを実用化する実験の場として、「川瀬巴水展」が選ばれたというわけだ。

 ワイヤレスの通信機能を使って、手元のレシーバーに作品の説明を発信する「音声ガイド」は、導入例がいくつもある。画像とともに鑑賞できる方式は、任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」上で解説ソフトを再生しながら鑑賞する「スーパーエッシャー展」(2006年11月〜07年1月、東京・渋谷の『bunkamura・ザ・ミュージアム』)があった程度。作品と音楽のコラボレーションに、PDAへの情報配信も織り交ぜた例はなかった。

 これに対して、「ゲンコーダMark」の最大の強みは、「無線が使えない場所でも情報配信を行える」(茂出木氏)ことだ。携帯電話で電子透かしデータを拾い、ウェブサイトにアクセスして情報を閲覧するような使い方も可能だ。

 今回は展覧会だが、実は、音楽が鳴り響くイベント会場でPDAや携帯電話に情報を配信するような、広告やプロモーションへの活用が本意。DNPは「ゲンコーダMark」のシステム関連で、09年度に5億円の売り上げを見込んでいる。

 ≪ポスターへ応用≫

 同社は06年10月、「モナリザ」で有名なパリのルーブル美術館と提携した「ルーヴル−DNPミュージアムラボ」を東京都品川区の「DNP五反田ビル」にオープン。ルーブルの名品1点を展示し、デジタル技術を使って作品をさまざまな角度から鑑賞する実験を行っている。

 第2回に展示した古代ギリシャの陶製の女性像「タナグラ」では、3次元CG(コンピューターグラフィックス)化してモニターに出力。実物では不可能な、ひっくり返して足の裏から見るような鑑賞法も可能にした。

 3月1日まで開催中のルネッサンス期の画家、ティツィアーノの名画「うさぎの聖母」の展示では、鑑賞者の視線が絵のどこを見ているかを把握できる装置を備えた。「商業ポスターのどこが1番見られるかを把握するのに役立つ」と担当者。ここでも本業への応用が研究されている。

                   ◇

 ■建物内部にも入れるVR映像

 印刷会社のデジタル強化が進んでいる。DNPは130年の歴史を誇る老舗だが、実は最先端のデジタル企業でもある。

 70年代から、活字を使わずコンピューター上で組み版を行う「CTS」の技術を導入。これが印刷技術のデジタル化を推進した。いまでは、電子書籍の制作や画像や映像のデジタル化、インターネットのウェブサイトの構築といった事業へとつながっている。美術関連では90年代後半から、作品をデジタルデータ化して記録するアーカイブ事業を手がけている。

 DNPと肩を並べる凸版印刷でも、寺院や宮殿をデジタル技術でVR(バーチャルリアリティー)の映像にする事業を進めている。

デジタル化されたデータを呼び出し故宮の中を自在に動き回れるようにしたVRコンテンツ「故宮<紫禁城・天使の宮殿>」=東京都文京区の「トッパン小石川ビル」
デジタル化されたデータを呼び出し故宮の中を自在に動き回れるようにしたVRコンテンツ「故宮<紫禁城・天使の宮殿>」=東京都文京区の「トッパン小石川ビル」
 
 東京都文京区にある「トッパン小石川ビル」には「VRシアター」があり、土日と月曜の祝日に、デジタル技術で再現した北京の「紫禁城(故宮)」の映像を見ることができる。

 通常の映画なら、撮影された場所しか見られないが、VRの「紫禁城」は、左右や上下に視線を振ったり、建物の内部に入っていくことが可能。緻(ち)密(みつ)に表現された調度品や美術品を間近で見たり、逆に、皇帝が権勢を誇った「紫禁城」の壮大さを体感したりできると評判だ。

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