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【納得ゼミナール】アジアを襲う食糧危機 「安定供給の時代」終焉の見方

2008/4/9

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パキスタン第2の都市ラホールの食料品店で小麦粉を手に入れようと争う市民ら=5日(AP)
パキスタン第2の都市ラホールの食料品店で小麦粉を手に入れようと争う市民ら=5日(AP)

 パンや乳製品など食品価格の値上げが相次いでいるが、海外ではアジアを中心にコメや小麦など主食の穀物が2倍に値上がりするなど食糧危機の様相を見せ始めた。食をめぐる世界規模の構造変化が背景にある。オイルショック以来、30年余にわたり穀物価格が安定推移した時代が終焉(しゅうえん)を迎え「アグフレーション(食料インフレ)時代」が幕を開けたとみられている。

 ◆輸出規制相次ぐ

 タイに次ぐ世界2位のコメ輸出国インドは3月末、米価急騰に対応し、すべてのコメの輸出停止を決めた。すでに世界最大のコメ生産国の中国やベトナムなど他の輸出国も輸出規制に動いている。最大のコメ輸出国、タイは4日、輸出を維持する方針を表明したものの、同国の米価は昨年5割も上昇。その後も値上がりが続き、いつ規制をかけてもおかしくない状況だ。

 主食穀物を輸入に頼る消費国には混乱が広がっている。世界最大のコメ輸入国フィリピンは共産系ゲリラが食糧不足で不満を募らせる市民を扇動。コメ輸送車が襲われるなど政情不安が高まっている。アロヨ大統領は、国内で穀物の買いだめをした場合、経済サボタージュ行為とみなし、最悪死刑とする厳しい取り締まりを警察に要請した。

 昨年、ブット元首相暗殺事件が起きたパキスタンでも小麦不足が現在の政情不安を拡大する心配がある。バングラデシュでは昨年来、米価が倍になり、多くが1日1食で生活。エンゲル係数は7〜8割に跳ね上がったという。インドネシアは食品を中心に3月の消費者物価が1年半ぶりの高水準である8・2%となり経済基盤を脅かしている。

 ◆温暖化が収穫に打撃

 国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の食品価格は2005年末で1998〜2000年比1・2倍にすぎなかったが、07年末には1・8倍以上へと急騰した。英公共放送BBCは、国際的な穀物相場が、70年代の2度のオイルショックにより高騰して以来、高すぎず安すぎない水準で推移してきた「ゴルディロックス(適温)時代」が終わりを告げたと指摘した。

 この背景にあるのが、需給両面で進む構造変化だ。

 需要面ではまず、05年に65億人だった世界人口(国連推計)が50年後に92億人へと1・5倍に増えるのに加え新興経済国で食品の大量消費が進んでいる。たとえば中国では可処分所得の増加に伴い食が西洋化し、1人当たり年間肉消費が80年の20キロから07年には50キロに増加。肉牛1キロを生産するのに7キロの穀物が必要とされ、新興経済国が近い将来、世界の食糧の過半数を消費するようになる。

 また、米ブッシュ政権のエネルギー政策に基づき、10年までに石油代替燃料のバイオエタノールに全米のトウモロコシの3割が消費される見通しだが、この流れはヘッジファンドなどによるマネーゲームで加速。ドル建て資産から穀物先物取引へのシフトで穀物価格を実需以上に押し上げた。

 これに対し供給面で穀物価格を急上昇させている要因が、昨年の天候不順による農作物被害だ。干魃(かんばつ)や台風、大雨による洪水被害などが北半球の広い地域を襲った。これがアジアの食糧危機の直接の要因となったが、気象専門家は、大規模自然災害の増加が地球温暖化と無縁ではないと指摘。昨年の農作物被害が一過性にとどまらず、今後一段と拡大する心配もある。

 穀物価格の上昇は飼料価格を通じ食肉や乳製品の価格に反映されることはいうまでもない。アグフレーションはアジアだけでなく、中南米や欧州にも広がりつつあり、日本の経済の先行きや食糧安保論にも影響を与えそうだ。(佐藤健二)

           ◇

【用語解説】アグフレーションとゴルディロックス 

 アグフレーション(Agflation)は 「agriculture(農業)」と「inflation(インフレ)」の造語。とくに、ここ2〜3年の急激な食料価格上昇を表す。ゴルディロックス(Goldilocks)はトルストイの童話「3びきのくま」の主人公の少女の名。少女が迷い込んだクマの家で飲んだ、熱くも冷たくもないシチューから、欧米では景気の過熱も冷え込みも心配ない(ちょうどよい)経済状況や価格水準を形容する言葉として使われるようになった。

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