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成長への新たなシナリオ 旭化成社長・蛭田史郎氏

2008/3/4

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 ■省資源型社会をつくる先兵に

 ■環境税より技術革新の促進

【プロフィル】蛭田史郎
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 ひるた・しろう 横浜国立大学工学部応用化学科卒。64年旭化成工業入社。取締役電子機能製品部門副部門長、98年同エレクトロニクス事業部門長、常務、専務、副社長を経て03年4月から現職。66歳。福島県出身。
【プロフィル】蛭田史郎

 ひるた・しろう 横浜国立大学工学部応用化学科卒。64年旭化成工業入社。取締役電子機能製品部門副部門長、98年同エレクトロニクス事業部門長、常務、専務、副社長を経て03年4月から現職。66歳。福島県出身。
 
 −−来月から京都議定書に基づく二酸化炭素(CO2)の排出削減が始まる。企業としてどう考えるべきか

 「地球の自然が持つ自浄能力の範囲であれば本来、地球環境問題は発生しないはずだが、産業革命以降、利用しやすい天然資源を使って人類は文明を発展させ、経済的な豊かさを享受してきた。それによって地球環境問題が生じたのであれば、文明利用の対価として原状回復のための努力を行うことは企業としても大事なことだ」

 「京都議定書は、地球環境問題に取り組むうえでのスタートラインと思っている。内容的には国のエゴイズムがぶつかり、制度として欠陥もあるとは思うが、人類に警鐘を鳴らした意義は大きく、その思想を生かした取り組みを進めていくことが大事だ。基準年の取り方や“ぬれたぞうきんと乾いたぞうきんでは違う”といった議論もあるが、大きな視点で考えるべきだろう」

                  *  *

 −−企業に求められる取り組みとは

 「温室効果ガスの地球の自浄能力が30億トン強といわれるなかで70億トンに達している。1割、2割削減というレベルではなく、全体の仕組みを直していかなければならない状況にあるのは確かだ」

 「日本はもともと資源がない国だったから、資源を有効に使うことが企業活動の前提となってきた。70年代の石油ショックのあとも生き残りのためにいち早く対応して、結果的に日本企業の競争力を高めた。それだけに、従来の延長線上の考え方で効率化を進めるのが難しくなっている。“乾いたぞうきん”の議論にもなるが、今まで以上に思い切った取り組みが必要であることは覚悟している」

 −−その実現のためには

 「環境税を取って国が予算を配分するとの考え方は議論が分かれるのではないか。重要なのは技術革新を促進することで、場合によってはぞうきんを使わないという発想も必要になる。予算配分で解決できる問題ではない」

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 −−国民の意識の問題もあるのではないか

 「資源の有効活用などエコ教育も大切だが、企業としては大幅にエネルギーを低減しても、従来の生活レベルを維持できる環境をいかに提供し続けるかが重要だと思っている。近年、日本人もようやく水を有料で買うことがめずらしくなくなってきたが、いずれ空気も有料になる時代が来るかもしれない。そのときにいかに安くてきれいな空気を提供できる仕組みをつくれるかだ」

 「日本は世界の人口のわずか2%だが、研究開発費は20%を占めている。その割には十分に成果が出ていないとの見方もある。まずは成果を出せるような研究開発の仕組みをつくる。積極的な研究開発投資によって、日本が省資源型社会をつくる先兵になる必要があるし、その力はあると思っている」

 「すでに京都議定書のあとに向けて、温室効果ガスを半分以下に削減するという議論も始まっている。企業として着実に改善する努力は続けていくが、これからはケタ違いの成果を出すような技術革新が求められている。最先端の分野ほどビジネスチャンスは大きく、日本を発展させていく武器になると考えている」

                   ◇

 ■動き出す「京都メカニズム」

 1997年12月に京都市で開催された第3回気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)で採択された京都議定書は、2004年にロシアが批准したことで05年2月に正式発効した。議定書では、先進国全体の二酸化炭素など温室効果ガス6種の排出量を、08〜12年の約束期間中に、1990年(基準年)に比べて少なくとも5%削減することを目標として定めた。国別では欧州15カ国が8%、日本はカナダ、ポーランドとともに6%と定められた。

 目標達成のために「京都メカニズム」と呼ばれる仕組み、先進国間で排出枠の一部移転を認める「排出権取引」、途上国での排出削減事業を促進する「クリーン開発メカニズム」、先進国で生じた排出削減単位の移転を認める「共同実施」の3つの導入が決められた。日本の経済界は排出権取引に消極的だったが、ここに来て日本経団連が方針を転換する姿勢を打ち出した。

                   ◇

 ■「環境は資源」で成長

 ■“安全な水”へ濾過膜活躍

「マイクローザ」を使用した水処理施設
「マイクローザ」を使用した水処理施設
 
 「いずれ水だけでなく、空気も有料になる時代が訪れるかもしれない」−そんな驚くべき予測が蛭田さんの口から出てくるのも、旭化成は環境を資源と意識しながら成長してきた企業だからだ。

 今や世界のトップシェアをもつイオン交換膜技術も、カセイソーダの触媒だった水銀を使わないようにする環境対策が発端。今年に入って米国でも大型設備の受注に成功し、イオン交換膜法食塩電解プロセスの累積受注は1500万トンを突破した。

 安全な水づくりでは精密濾過(ろか)膜「マイクローザ」が世界各地で大活躍している。特殊な繊維を中空糸状の膜にしたもので、膜の連続した組織の間にある穴や分子配列のすきまを利用して水の濾過に利用されている。中国などでは下水や工業排水を処理して再利用したり、環境負荷のための処理に利用されている。

 米国でも、飲料水に入り込んだ病原性原虫クリプトスポリジウムの問題が相次いだことから、数年前に法律を改正。従来の濾過方式から膜方式への転換が急速に進み出し、マイクローザを利用した浄水場システムの採用が相次いでいる。

 「環境を骨格に据えて事業に取り組んできた思想をこれからも生かして、より強い骨にしていく」−蛭田さんがめざす技術革新を今後どのように実現していくかが、旭化成成長の鍵を握っている。

 同社が推進してきたロングライフ住宅では、政府も200年住宅構想に基づいて普及に乗り出そうとしている。住宅の断熱性能アップに加えて、地熱などの新エネルギー利用も住宅にとって重要な技術テーマとなっている。蛭田さんも環境分野の技術革新に手応えを感じている様子だ。

 「材料の分野でも世の中の仕組みを大きく変えられる鍵になる製品はまだまだ生み出せる」

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 【トピックス】

 ■「EcoゾウさんClub」 エコ生活支援します

 
 温室効果ガス削減に向けて頭を悩ませているのが家庭部門の対策だ。日本の目標は、90年基準で6%減だが、05年度までの実績は8.1%増。二酸化炭素だけを見ると13.9%増と大幅に増えており、家庭部門が37.4%増と大きく押し上げる要因となっているからだ。

 家庭での省エネ運動に貢献しようと、旭化成ホームズが取り組んでいるのが、インターネットを利用したエコ生活支援プログラム「EcoゾウさんClub」だ。誰でも無料で会員登録することができ、毎月家庭で消費する電力、ガス、水道の使用データを入力して利用状況を可視化することで、楽しんで省エネに取り組んでもらおうという仕組みだ。

 エネルギーの使用状況から二酸化炭素の排出量を家族ごとに計算。月ごとに参加家族のランキングも公表することで、省エネに対する意識を高めてもらおうというわけだ。子供にも興味を持ってもらおうと、かわいらしいゾウさんのイラストを使い、環境問題の分かりやすい解説も掲載している。親子で一緒に利用すれば、エコ教育の教材としても活用できそうだ。

http://www.ecofootprint.jp/member/top.php


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【会社概要】旭化成

 ▽東京本社=千代田区有楽町1−1−2、日比谷三井ビル

 ▽設立=1922年(2001年1月旭化成工業から社名変更)

 ▽主な事業=化学、住宅、医薬、繊維、エレクトロニクス、建材など

 ▽資本金=1034億円

 ▽売上高=1兆6238億円(連結ベース、07年3月期)

 ▽従業員数=2万3715人

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