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【スポーツ経営放談】帝京大経済学部教授・大坪正則 

2009/11/16

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西武の水沢スカウト(左)から帽子をかぶせてもらい、ガッツポーズする花巻東高校の菊池雄星投手=10月29日
西武の水沢スカウト(左)から帽子をかぶせてもらい、ガッツポーズする花巻東高校の菊池雄星投手=10月29日

 ■今こそドラフト改革を

 今年のプロ野球のドラフトの目玉は花巻東高校の菊池雄星投手だった。「20年に1人」の逸材と目された彼に対して、国内の全球団と米国大リーグの8球団が獲得に興味を示した。そのため、彼はドラフト前に国内外の20球団と面談を行い、その上で、国内球団への入団決意を披露し、涙も流した。競合球団による抽選で彼との交渉権を引き当てた埼玉西武ライオンズは、入団早々から彼に特別メニューを課して、エリートコースを歩ませる計画だそうだ。彼の成長を期待したい。

 ◆飛び交う裏金

 ドラフトは1936年、米国のNFL(プロアメフト)が最初に採用した。このシステムでは、1順目は前年度最下位球団から順次新人選手を選択し、2順目以降は前回と逆の順番での採択となる。(日本で「完全ウェーバー式」と言う)ドラフト導入の目的は2つあった。

 1つ目は、最下位球団に最優先の選択権を与えることから生まれる球団間の戦力均衡維持。2つ目は、1位指名新人選手の契約金を最高額に設定することから実現する契約金高騰の抑制。そして、もう一つ利点があった。どの球団が最下位になるか不確実だから、入団前に裏金が動くことがないことだ。従って、この仕組みは球団選択の自由を奪われる選手には不都合だが、経営者に多大な利益をもたらす。だから、米国の他のプロリーグも当然のごとくこの制度を採用した。リーグによって運営方法は若干異なっているものの、根本的な考え方は変化なく今日に至っている。

 ところが、NPB(日本野球機構)は米国のドラフトとは似て非なるものを作ってしまった。ドラフトに自由競争の原理を持ち込み、裏交渉を行い、金の力で有望選手を抱え込むことを「経営努力」とへ理屈を付け、ドラフトの基本的な考え方を曲げてしまった。各種の金が裏で飛び交い、競争に負けたスカウトが自殺する事件も起こった。かかる環境では、野球を教育の一環と主張する日本高校野球連盟(高野連)がNPBの姿勢を容認するわけがなく、NPB関係者と高校球児たちとの接触は、たとえ親子であっても、厳禁となった。この関係が、濃淡はあるが、大学や社会人のアマチュア団体にも影響を及ぼした。

 かくて、プロ選手たちとアマチュアの選手や組織との会話がなくなり、現状のドラフト制度が続く限り、彼らがアマチュア野球の指導者になる機会も極度に少なくなった。しかしながら、NPBセカンドキャリアサポートが実施した選手たちの「引退後の進路希望」調査で、学生野球指導者が1位、スカウトなどの球団フロントが3位、プロ・社会人などの指導者が5位となり、選手たちが保有する技術を第二の人生でも活用したい気持ちを強く持っていることが判明した。

 ◆引退後の面倒も

 ドラフトを経て、NPBの球団に毎年約70人が入団する。彼らは最高の才能を持ったスポーツ界の超エリート集団だ。だが、彼らの平均年俸は約3700万円。選手寿命は約10年。従って平均生涯年俸は約3億7000万円。生涯年俸に関する限り、一流企業の平均的サラリーマンと同程度なのだ。

 加えて、彼らの年金は満額でも年間142万円。しかも、受給開始が55歳だから、引退から年金開始までの長い期間を耐える必要がある。彼らが指導者になりたい理由がここにある。

 昨年の田沢選手に次いで菊池選手も大リーグを目指す可能性が高かった。もはや、NPBが選手を国内に縛り付けることも限界に達しつつある。選手たちの大リーグ行きを阻止する手段は、NPB球団の収入増加を図り、日米間の選手年俸の格差を縮小することだが、一朝一夕にできることではない。

 現状、今できることはドラフト改革だ。選手たちに日本で野球を継続してほしいのであれば、NPBは、「完全ウェーバー式」のドラフトを採用し、選手たちに引退後、高校・大学・社会人の野球チームの指導者になる道を与えてやるべきだ。もちろん、学生野球協会や高野連の了承を得る必要がある。そうなれば、大学の野球部員は在学中に教職の資格を取ることになるだろう。私は、彼らが今以上に勉学に励む姿を見てみたい。

                  ◇

 ≪NACK5≫

 株式会社エフエムナックファイブ(さいたま市)が運営するFM放送局。サービスエリアは埼玉・東京全域・神奈川・千葉・群馬・栃木・茨城の大部分。このコラムは大坪帝京大教授が出演している「NACK5」のラジオ番組「Catch the Sports!」(毎週日曜日午後8時〜午後8時半)の内容に沿っています。

                   ◇

【プロフィル】大坪正則

 おおつぼ・まさのり 西南学院大学商学部卒。1970年伊藤忠商事入社。同社退社後、99年に株式会社ニッポンスポーツマネジメントを設立、ヤクルト球団やニッポン放送などとコンサルタント契約を結んだ。2004年に帝京大非常勤講師となり、現在は経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営。ブログはhttp://blog.nippon−sports.com

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