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日本政府 難局打開に“外交カード” 迫るCOP15、途上国支援基金を提案

2009/11/23

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北京のビル建設現場。温暖化対策での途上国支援もCOP15に向けた交渉の焦点となっている(ブルームバーグ)
北京のビル建設現場。温暖化対策での途上国支援もCOP15に向けた交渉の焦点となっている(ブルームバーグ)

 日本政府は、地球温暖化防止に向けた2013年以降の国際枠組みを決める「気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)」の開催が12月7日に差し迫る中、“外交カード”を切り始めた。途上国の温暖化対策を資金・技術面で後押しする「鳩山イニシアチブ」の具体策が切り札の一つで、多様な途上国の温暖化対策ニーズに応える基金を提案。12年までに総額92億ドル(約8200億円)を拠出する方針も表明した。一連の支援策で途上国の積極姿勢を少しでも引き出し、難航する次期枠組み交渉の前進を狙う。

 ◆92億ドル拠出方針

 「日本に対して非難めいたものはまったくなかった」

 COP15に向けた閣僚級準備会合が、今月16日から2日間にわたりコペンハーゲンで開催された。そこに出席した環境省の交渉担当者がこう感想を述べ、日本が一定の存在感を発揮したことに満足感を示した。

 温室効果ガスの削減義務などをめぐり先進国と途上国の対立が続く中、COP15での新たな議定書の採択は困難な情勢だ。このため気候変動枠組み条約事務局はCOP15でひとまず「政治合意」の採択を狙う意向で、準備会合は政治合意に向けた作業を始める“キックオフ会合”としての色彩が強かった。

 すでに日本は、京都議定書に続く次期枠組み「ポスト京都」を決める交渉を左右する途上国支援策の強化を課題に掲げて、総額100億ドル規模の「クールアース・パートナーシップ」を08年から5年間で立ち上げると表明。円借款や無償資金協力による支援を展開している。

 今回の準備会合で小沢鋭仁(さきひと)環境相が示した「92億ドルの拠出方針」は、同パートナーシップを衣替えして実行を目指している。100億ドルのうち、80億ドルはまだ実行していないため、この未使用分に、世界銀行が管理する「気候変動投資基金(CIF)」に拠出するために予算化した12億ドルを積み上げたというわけだ。

 ◆民間資金が課題

 準備会合に先立つ交渉では、省庁横断の副大臣級チームで検討を進めてきた鳩山イニシアチブの具体策を提示した。

 具体策は、途上国で温室効果ガス排出量を削減する活動に必要な体制づくりなど目的を明確化した3種類の基金を軸に構成されている。政府は、支援先での排出削減効果を最大化させるため、温室効果ガスの測定・報告・検証のためのルール作りを主導することなども強調した。

 「少なくとも次期枠組み交渉でしっかりと発言できるポジションがとれた」(環境省の交渉担当者)。手応えを感じながら政府は、13年以降の支援策の中身をさらに詰めたい考えだ。

 その過程で焦点となりそうなのが、公的資金を「民間投資の呼び水」とする仕組みづくりだ。排出削減に必要な世界の資金需要は年4000億ドルとの試算があり、その大半を途上国が占める。国際協力銀行(JBIC)の本郷尚・環境ビジネス支援室長は「民間資金をうまく動員して膨大な資金需要に応えるべきだ」と指摘。積極的な官民連携に期待を寄せる。

 政府は今年3月、JBICを活用した総額50億ドル規模の「環境投資支援イニシアチブ(LIFE)」の発足を表明。途上国の官民が環境負荷が少ない発電事業や都市交通システムなどの分野に投資する際に援助するスキームで、インドやアラブ首長国連邦(UAE)など4件の支援実績をもつ。COP15をまたいで煮詰める鳩山イニシアチブの議論で、LIFEを発展的に解消し国際的な仕組みにスケールアップする課題が浮上する可能性は高い。

 加えて、投資家が途上国に投資する場面でのリスクを保証する貿易保険や債務保証など、日本企業が安心して投資できるような環境の整備も進みそうだ。

 ◆交錯する思惑

 とはいえ、世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量の約4割を占める米国と中国。次期枠組み交渉の成否は両国の対応にかかっており、多国間交渉の中での日本の行動は「一つの提案」に過ぎないのも事実で、排出量取引制度で先行する欧州連合(EU)も対抗する案をもつ。オークションによる排出枠の売却収入をEU加盟国の政府収入とし、環境対策を促進しようとする動きだ。日本はそこまでの手段がない。

 さらに「支援策を出せば出すほど要求が増える」(交渉担当者)というしたたかさがある途上国と先進国の溝を埋める取り組みは一筋縄でいかない。途上国は先進国が意欲的な削減目標を国際公約することを求めているが、上院で気候変動関連の法案審議が遅れている米国はいまだ数値目標を明らかにしていない。13年以降の途上国支援額を明示する要求も強まっている。

 ただ、こうした要請に無制限に応えると、しわ寄せは納税者に跳ね返る。それだけに「支援の効果を国民に説明する責任を果たす課題」(三菱総合研究所国際戦略研究グループ)もある。みずほ情報総研環境・資源エネルギー部の瀬戸口泰史次長は「現地資本主導の事業を後押しするなど相手国の経済事情を踏まえるべきだ」と指摘。過度に資金規模を追う支援策にくぎを刺す。(臼井慎太郎)

                   ◇

 ■2013年以降の途上国支援策の骨子

 ・途上国ニーズに対応した3基金の創設

  (1)世界銀行を活用し温暖化防止活動を支援する「気候変動基 金」

  (2)脆弱(ぜいじゃく)な後発開発途上国や小島嶼(とうしょ)開発途上国の活動支援を狙う 「適応基金」

  (3)温暖化の実態把握や人材育成などの体制整備を後押しする 「体制強化基金」

 ・最適な資金を迅速に受けられるよう専門家グループがワンストップで支援する仕組みの整備

 ・知的財産権を両立する形でニーズに合致した技術を移転・普及する仕組みの構築

 ・温室効果ガス排出量の測定、報告、検証のためのルールづくり

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