【ニッポン活力プロジェクト】情報処理推進機構理事長・西垣浩司氏
2009/11/24
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■「クリーン・安全」得意分野に特化を
−−産業の国際競争力を高めるためには何が重要だと
「選択と集中を進め、日本が本当に得意とする分野にリソースを集中していく必要があるだろう。そうしないと経済が発展していかないのではないかとみている。そのことはコンピューターの動向をみても説明できる。これからは機械に搭載し、その動作を制御する組込ソフトが伸びていくとみられているが、それに伴って膨大なコンピューターソフトが必要になる。ところが、それを担う人材は少ないのが実情だ。日本のコンピューター関連の卒業者数は、専門学校も含め毎年約2万人。これに対し、インドは20万〜30万人に上り、中国もこれとほぼ同じ規模だ。つまり、コンピューター社会を担う人材の規模からしても分かるように、日本が数でかなわないという構図は否定しようがない。それだったら特定の分野に特化すべきという考えだ。これからは世界の中の日本、すなわち『60億分の1億』という認識をはっきり持って物事を考えて行く必要がある」
−−日本はどういう分野を狙っていくべきか
「キーワードの一つが『クリーン・安全』。これに関しては、日本は世界に先行してノウハウを積み重ねてきた。これは絶対に有効に生かすべきだろう。それと自動車や家電で培った製造技術と高い品質管理手法も、日本の競争力を保持していくうえでの源泉といえる。日本人には、きちょうめんに仕事をこなし、皆で協力してきっちり仕上げるという気質がある。この国民性は原子力発電設備とか高速鉄道といったクリティカルな要素を含んだシステムのプロジェクトで生きる。それと新興国などの他の国に比べると中間層が多く、これも強みとして生かすこともできる」
−−そのために日本として、まずやるべきことは
「最大の課題は、十分なセーフティーネット体制を敷き、かつ競争社会を実現することだ。福祉政策を充実させて過度にセーフティーネットの方に重心を移すと、活力を失って経済成長が鈍化してしまう。その点、北欧は見習うべきところが多い。セーフティーネットがきちんと構築されている半面で、ノキアといった世界的メーカーが出現する例をみても明らかなように、産業に競争原理が働く仕組みができあがっている。そういう社会を日本も目指していくべきではないか」
−−日本の雇用慣行を見直す必要はないか
「大事なことは労働の流動性を高めることだ。日本の労働の流動性はこれまでに比べると進んではいるものの、いまだに終身雇用制が前提になっており、世界からみたら異質だ。2けた成長が続いた高度成長期には、終身雇用制の良い面が出ていたが、低成長下の今は制度的に耐えられなくなっているのが実態だろう。労働の流動性が高まれば、プロジェクト単位で人材が集まってダイナミックなことができる可能性が高く、利点が多い」
−−一方で日本の労働力人口は確実に減少していく
「人口を増やす手立てを講じたにしても効果が出るまでには時間がかかる。私は良い意味での移民に、正面から取り組む必要があると考える。日本が必要としている労働力を補完してくれる人材を、外国からきちんとした秩序に基づいて受け入れるというものだ。日本人の雇用が奪われると危惧(きぐ)する向きもあると思うが、私はあらゆる雇用の現場をもっと良く見てほしいと言いたい。本当に役に立つ人材を受け入れれば、日本の経済活力が増すことは間違いない」
◇
■戦略的IT投資 経営左右する重要性認識して
−−世界で活躍できる人材を育てる必要もあるのでは
「米国の大学院で学び、博士号を取得する人数は、中国人が毎年約6000人、韓国人が約1500人。しかし、日本人は200人にとどまる。日本人が内向き志向になっていることの表れといえる。これを打開するうえで、カギを握るのは学校教育だ。チャレンジ精神を養ったり、グローバルな見方ができるような教科を増やすなどの改革を打ち出す必要がある。一部に反対論者がいるが、そういう意味で私は小学校から英語を学ばせることに賛成だ。また、深刻化している『理科離れ』も食い止めなければならない。日本人の教育レベルを維持するためにも、数学や物理がきらいな人を増やしてはならない。人間が理性的な判断をするうえからも、数学が苦手というのは致命的だ」
−−こうしてみると日本社会は多くの課題を抱える
「女性の活用が進んでいないのも問題点の一つだ。日本では大学を卒業して家庭に入っている女性がたくさんいるが、環境さえ許せば働きたいと思っている人は多いはずだ。女性の活躍の場を広げることは、労働力不足の解消にもなる。さらに、人材に関していえば、企業がCIO(最高情報責任者)への認識を改める必要もある。日本は戦略的なITの活用が遅れ、それが、なかなか新しいビジネスモデルを生み出せない要因にもなっている。クラウドコンピューティングのように、大きなパラダイムシフトが起きていることもあって、日本企業は戦略的なIT投資の重要性にもっと目を向けてほしい。そのかじ取りをするのがCIOだ」
−−単なる情報システムの責任者ではないということか
「ビジネスモデルにまで口を出せる立場にあるのが本来のCIOだ。社内で育成できなかったら外部からリクルートしてもいいだろう。CIOが機能していないから、情報システムの構築に際してベンダーに丸投げし、ベンダーはさらに下請けにも発注し、出来上がったときに満足いかないものになることが少なくない。情報システムは経営を左右するわけだから、日本としてその重要性をもっと強く認識しなければならない」(武田範夫)
◇
【プロフィル】西垣浩司
にしがき・こうじ 東京大学経済学部卒。1961年日本電気(現NEC)入社。90年取締役、常務、専務を経て99年社長、2003年副会長。08年から情報処理推進機構理事長。71歳。東京都出身。
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