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消費者庁 今秋に発足

2009/8/4

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 □三菱総合研究所 先進ビジネス推進センター総合リスクマネジメントグループ・義澤宣明

 ■消費者と企業 信頼向上の潤滑油に

 食品の偽装表示問題などを契機として、消費者行政の一元化を目玉とする消費者庁がこの秋に発足する。

 三菱総研が最近実施した意識調査で、「国の消費者保護対策で消費者が保護されているか」を質問したところ、「あまりそう思わない」と「全体的にそう思わない」をあわせた回答が約6割に上った。多くの消費者は、現状の消費者保護対策に満足していないと考えられる。このような背景からも、新設される消費者庁への期待は大きいと思われる。


 ◆事故想定が必要

 政府は、消費者庁設置の目的を「消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けて、(1)消費者の利益の擁護および増進、(2)商品および役務の消費者による自主的かつ合理的な選択の確保、(3)消費生活に密接に関連する物資の品質の表示に関する事務を一体的に実施すること」と説明している。

 また、消費者庁関連3法の1つである、「消費者安全法」のポイントとして、(1)地方公共団体への消費生活センターの設置、(2)消費者事故などに関する情報の集約、(3)消費者被害の防止のための措置−などがあげられている。

 消費者庁発足後に消費者事故が発生した場合、消費者被害防止の措置が、どのように進められるかは、企業においても大きな関心事である。

 既存の法律にもとづく措置がない、いわゆる「すき間事案」については、企業にとっても初めての対応となる。

 消費者庁発足後は企業にどのような対応が求められるかを、あらかじめ分かりやすく説明することなどが、事故発生時の対応をより迅速化する上では重要である。例えば、事故発生を想定した情報伝達の事前シミュレーションを実施することも有効であろう。

 ◆欧州に比べ厳しい目

 今後、製品やサービスは国境を越えて、日本に輸入されたり日本から輸出されたりする機会が、これまで以上に増加するだろう。その場合、消費者保護や消費者行政は、国内問題への対応という範囲のみではなくなる。

 そこで三菱総研では、消費者の権利に関する意識調査の結果を、EU加盟国で実施された類似の意識調査と比較した。

 「消費者の権利を企業がどの程度守っているか」という質問への回答を比較すると、EU加盟国平均、および主要8カ国(G8)メンバーであるイギリス、フランス、ドイツ、イタリアのいずれの調査結果と比べても、日本での企業への評価は低いものとなった。

 「全体的にそう思う」と「ある程度そう思う」をあわせた回答は、EU加盟国全体の平均が62%であり、日本の36%を大きく上回っている。特にイギリスについては78%と日本の2倍以上になっている。

 EUの調査は2006年に実施されたもので、実施時期にずれはあるものの、日本の消費者は、EU諸国と比べると企業を厳しい目で見ているといえよう。

 企業に対する消費者からの厳しい目は、消費者行政に対して企業への規制強化をもとめる方向性をはらんでいる。

 もちろん、消費者被害を防止するための規制は重要であるが、国際的な水準を大きく上回る厳しい規制の取り入れは、国内企業の体力低下につながるおそれがある。また、海外企業が、日本の市場へ参入する場合の障壁と指摘される可能性もある。

 将来的には、海外での規制とバランスのとれた消費者行政の推進が求められていくことになる。そのためには、EU諸国と比較して低い日本の消費者の企業への信頼を向上させることが重要である。同程度の信頼のもとで消費者行政が展開されれば、規制の国際的なバランスも取りやすくなる。

 消費者の信頼向上は、何より企業が最も真摯(しんし)に取り組まなければならないことである。その参考として、EU諸国でも消費者の企業への評価が高い国々の状況をいくつか詳しく調べるなどして、企業の信頼向上の具体的なポイントを明らかにすることも重要である。

 各企業は、自社の信頼向上に加えて、自社を含めた関係業界の信頼向上など、より広い範囲での信頼の向上にも積極的に取り組む必要がある。その点については、業界団体への期待も大きい。


 ◆コスト削減に貢献

 最後に、あらためて今なぜ消費者行政が注目されるかについて考えてみたい。

 国の行政機関は、これまでそのサービスの対象を「国民」と説明する場合が多かった。「消費者」が注目される理由としては、ライフスタイルの多様化などから、「国民」という大きなくくりでは、行政機関においてもさまざまなニーズに十分な対応ができなくなってきたということも考えられる。また、国が実施してきたサービスの一部を企業が実施することも、今後は増えるだろう。その場合、同じサービスでも対象は「国民」ではなく「消費者」と呼ばれることが多くなるだろう。

 このような中で、消費者と企業および行政が、将来的にどのような関係性を構築していくべきかについての議論も必要である。もちろん、消費者庁発足の契機となった偽装表示への対応や、消費者の危害の未然防止・拡大防止のためには、行政が企業に規制や指導などを行うことが重要である。これは、「規制する側とされる側」という関係にあるが、それとは別に、消費者と企業がしっかりとした信頼関係を結んだ豊かな消費社会の実現を支援することも長期的には消費者行政に求められているのではないだろうか。

 「消費者を守る」ということに加えて「消費者と企業の信頼構築を支援する」ということも、消費者行政の役割と考えられる。このことは国際的にバランスの取れた規制の運用や将来的な行政コスト削減にもつながる可能性がある。

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