博報堂(1)「脱・代理店」支える生活者発想
2009/8/25
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![]() 生活者発想を生み出す博報堂生活総合研究所。壁一面に、話題の出来事やキーワードが書き込まれている=東京都港区の同社本社 |
インターネットの台頭と、景気後退による企業の広告費抑制で、既存のマスメディアの広告の売り上げが落ち込んでいる。利益率の高いマス広告に支えられてきた広告大手のビジネスモデルも転換期を迎え、博報堂は広告スペースを広告主に販売する「代理店」ビジネスからの脱却に本腰を入れ始めた。企業理念として培ってきた「生活者発想」を武器に、企業の課題を広告を通じて解決するコンサルティング型の広告会社へと生まれ変わる。
≪全体把握へ調査≫
博報堂が、生活者発想を掲げたのは1981年だ。社内の研究機関として生活総合研究所を設立し、生活者の研究を進めてきた。生活者という言葉は、広告業界を中心に市民権を得て、消費者に代わる存在として広く使われるようになった。だが、その発想の本質は、一般にはあまり知られていない。
生活総研の嶋本達嗣所長は「生活者は消費者の対極に位置する存在」と話す。広告主が人を見る場合、自社の商品やサービスを利用する消費者の側面に注意がいきがちだ。だが、「人の根本的な価値観や潜在的な欲求は、消費者という側面だけでは知ることができない」(嶋本所長)という。
家庭や仕事、自社商品以外の商品やサービスの利用など、人の生活全体を把握し、「人がどういう商品やサービスを求めているかを理解し、そこから広告を考える」(嶋本所長)のが、生活者発想だ。消費者という視点からは分からなかった新たな市場や生活者への訴求方法が、見えてくる。
生活の全体像を把握するため、生活総研では多様な調査を用いる。86年から隔年で行っている「生活定点調査」は、衣食住や余暇の使い方、働き方などについて、1000を超える設問を用意している。
アンケートや座談会をしたり、制限時間内に1つの単語から思いつく事柄を列挙する「強制連想法」で、被験者の本音を引き出す。「幸福の写真」といった抽象的なテーマで、写真を撮影させる手法も用いる。
広告主への説得力が求められるコンサルティング型広告で、20年以上にわたる生活者の変化を捉えた生活総研のデータは信頼性が高い。生活定点調査に加え、月1回の消費意欲調査や、年に数回発表するテーマ調査を通じて集まった生活者に関するデータは、営業現場で他社との差別化を図る博報堂の「強力な武器」(成田純治社長)だ。
新しいニーズやアプローチの切り口の提案も生活総研の仕事だ。
≪中波の変化に重点≫
生活者や社会の変化は、政治や経済など社会構造の変化を伴う10〜15年周期の大波、生活者の価値観や幸せを感じる基準が変化する3〜5年周期の中波、毎年変化し、消費動向や流行に直結する短波に分類できるが、生活総研はこのうち、中波の分析に重きを置いている。
2002年には、女性の場合、同じ年齢でも生活スタイルが大きく異なることに着目し、一番下の子供の年齢を基準に女性を分類する尺度「末子度(まっしど)」を提唱した。07年には、独り暮らし世帯や核家族が増え、小規模な世帯が多くを占める状況を「多世帯社会」と名付けた。
生活者の志向が多様化する一方で、研究対象が子供や高齢者にも広がるなど、単純な調査では生活者の実態に迫れなくなり、研究スタイルも「調査から生活者の対話」(嶋本所長)に切り替えた。大学生との共同研究も開始し、嶋本所長は「生活者と一緒に未来を作りたい」と話す。生活者発想は、誕生から30年目を前に、さらなる進化を遂げようとしている。(松岡朋枝)
◇
【会社概要】博報堂
1895年に教育雑誌の広告取次店として開業した。企業戦略につながるような創造型の広告立案を得意とし、2009年3月期の連結売上高は7763億円で国内2位。得意先の海外展開に合わせて17カ国68拠点を開設し、6月末時点の従業員数は3151人。03年には大広、読売広告社と経営統合し、従業員数約9600人、粗利益で世界8位の持ち株会社、博報堂DYホールディングスを設立した。
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