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食糧高騰 貧困層に打撃 飢餓、伝染病…社会不安を増幅

2008/10/23

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「世界食料デー」(10月16日)に合わせ食料の配給を受けるパキスタンの貧困層=15日、イスラマバード(AP)
「世界食料デー」(10月16日)に合わせ食料の配給を受けるパキスタンの貧困層=15日、イスラマバード(AP)

 世界の食料価格は今年初めのピークから総じて下落し、最近の関心は世界的な金融危機問題に移った。しかし、低所得国などでは飢餓や栄養失調に陥る人が増えるなど、貧困層の基本的人権を脅かし続け、こうした層への人道的援助の費用も上昇している。食料高騰の余波は、病気の蔓延(まんえん)、教育機会の喪失、格差の拡大、社会不安など、さまざまな弊害を招く。国連関連機関は包括的な行動計画を策定したが、計画が効果を上げるには多くの課題がある。

                   ◇

 ≪分析≫

 食料価格を押し上げる要因には(1)エネルギー価格の急騰(2)新興経済国での需要増加(3)農業部門への投資不足(4)通商政策のひずみ(5)バイオ燃料の生産増加(6)頻発する世界の異常気象−などがあり、食料高騰はこうした要因の組み合わせで起きている。

 FAO(国連食糧農業機関)の食料価格指数はそれぞれ2006年に9%、07年に23%と徐々に上昇。今年4月までの12カ月間では54%もの伸びを記録した。今年8月のFAO食料価格指数は過去7カ月での最低を記録したが、現在の食料価格の水準はなお昨年より高い。今後数年は高い水準を維持する見通しだ。

 ◆深刻な影響

 食料高騰はとくに低所得、低開発国で以下のような深刻な影響を与えるとみられている。

 (1)飢餓 世界銀行とWFP(世界食糧計画)の推計によると、現在、世界の栄養失調者は8億5400万人。食料価格高騰で、さらに1億〜1億3000万人が深刻な貧困と飢餓に陥るとみられる。

 (2)病気 栄養失調は伝染病の危険を高める。貧しい家庭は良質で健康的な食品を買うことができず、非伝染性疾患にもかかりやすくなる。医療費に回せる収入が少なくなり、とくにAIDS(後天性免疫不全症候群)や結核患者の増加につながる。

 (3)教育 収入のより多くを、より少ない食料に費やさなければならないため、多くの子供がお金を稼ぐため学校をやめさせられる。教育機会の減少は、不平等と貧困につながる。子供たちは虐待、搾取、病気にさらされやすくなる。

 (4)社会不安 物価高は社会的・政治的不安の危険を増す。小麦やコメなど主食となる食料の高騰は、(政権に対する大規模デモの扇動など)政治的に動機づけられた暴動を引き起こすかもしれない。今年だけで食料に関連した暴力や抗議行動が30件以上報告されている。

 食料高騰は、とくに低開発の食料輸入国にとって打撃が大きい。最も被害を受けやすいのは、都市部の貧困層、土地を持たない農村民、畜産農家、小規模農家、国内避難民や難民、その中でも女性や子供たちだ。

 ◆計画に暗雲

 食料、燃料、輸送費の高騰によって、人道的援助の費用も劇的に上昇。WFPだけでも今年の緊急活動費は、30億ドルから60億ドルへと倍増した。FAOは低所得国に種苗、肥料、家畜の飼料、農具などを小作農家に提供するために17億ドルの新たな資金を求めている。

 世界的な食料高騰に対応し、国連事務総長は4月、ハイレベルの特別委員会を組織。最近、「包括的行動枠組み(CFA)」を発表した。CFAにはFAO、WFP、世界銀行のほか、IMF(国際通貨基金)、WTO(世界貿易機関)、IFAD(国際農業開発基金)、OECD(経済協力開発機構)などが参加する。

 CFAは、食糧支援など、影響を受けやすい人々の直接的必要を満たすだけでなく、食糧安全保障や社会保障体制の拡大を目指している。国連加盟国はCFAを食料・燃料危機対策への積極的な第一歩として評価しているが、財政面の懸念もある。

 CFAの目標を達成するためには年間250億〜400億ドル必要とされる。資金に制約のある低開発諸国がどのように実施費用をまかなうか、具体的な提言に欠ける点も批判されている。

 これに加え、現在の世界の金融市場の状況を考えると、おそらくCFAへの資金提供も制約を受けるだろう。

 今後の食料・1次産品価格は今年前半にかけての急騰こそないものの、高値で推移する見通しだ。

 世界銀行は、今年から来年にかけ食料・穀物価格は高値を持続するが、その後は需給調整が進み、価格は下落し始めると予測。FAO、OECD、米農務省(USDA)は、主要穀物の価格が2015年まで04年当時以上の水準で推移するとみている。

                   ◇

 ≪結論≫

 世界的な食料高騰によって、発展途上国で1億〜1億3000万人の飢餓と栄養失調が発生。学校に通う子供の数は減り、社会不安の危険が迫る。人道支援のニーズは高まるが、それに応えるコストも増す。国際社会は野心的な計画を発表したものの、この計画は費用がかかりすぎ、具体性を欠くという問題を抱えている。食料危機で被害を受ける国、援助する国に加え、人道支援コミュニティーからの強い政治的意思と財政支援が欠かせない。


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