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ロシア新軍事ドクトリン 核先制使用の条件緩和へ

2009/10/30

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「米州ボリバル代替統合構想(ALBA)」首脳会議にオブザーバーとして参加するためボリビアに到着し、現地の女性から歓迎の花輪を贈られるロシアのパトルシェフ安全保障会議書記(左)=16日、コチャバンバ(AP)
「米州ボリバル代替統合構想(ALBA)」首脳会議にオブザーバーとして参加するためボリビアに到着し、現地の女性から歓迎の花輪を贈られるロシアのパトルシェフ安全保障会議書記(左)=16日、コチャバンバ(AP)

 ■軍弱体化に危機感 地域紛争を抑止

 ロシアが2000年に策定した「軍事ドクトリン(戦闘教義)」の見直しを進めている。ニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は「新ドクトリンでは、当局者が核兵器を使用できる条件が緩和されるだろう」と繰り返し述べている。パトルシェフ書記の最近の発言は、10月中旬のクリントン米国務長官のロシア訪問に合わせて行われた。ロシアは、旧ソ連圏の東欧諸国など、潜在的な敵国に核使用の可能性をほのめかすことで、紛争を抑止しようとしているとみられる。

                   ◇

 ≪分析≫

 現行ドクトリンにおいて、敵の核使用に対する核報復を除き、ロシアが核兵器を使用できるのは、敵が圧倒的な戦力で大規模な侵攻を図ったときの防衛目的に限られる。メドベージェフ大統領が議長を務める安全保障問題の最高政策立案機関、安全保障会議のパトルシェフ書記(連邦保安局前長官)は、年末までに公表される予定の「改訂版軍事ドクトリンでは核兵器の使用について具体的な変更が加えられるだろう」とこれまでに述べている。

 ◆NATOを牽制

 提案されている新方針では、大規模紛争だけでなく、局地的な紛争においても、核兵器の先制使用を認める条項が加わるだろう。ロシアが核兵器の先制使用の条件を緩和するのには、いくつかの理由がある。

 第1に、旧ソ連時代もそうだったが、ロシアの指導者は恐れられることによってのみ、国際的に敬意を払われると考えている。核兵器の使用条件を緩和すれば、こうした恐怖を生み出すことができるかもしれない。

 第2に、軍は現在、近代化計画を進めているところだが、通常兵器は削減され、一時的に作戦能力も弱まるだろう。スリム化した軍隊が専門能力を高めるまで、ロシアは軍事的に脆弱(ぜいじゃく)だ。

 ロシアは、少なくとも今後数年間、いかなる種類の紛争も起こす余裕がない。紛争抑止の警告として、核兵器使用の脅しが問題解決に有効だと考えられている。

 第3に、核兵器の使用条件緩和は、グルジアやその他の旧ソ連諸国で将来起こりうる紛争に、とくに米国と北大西洋条約機構(NATO)がかかわらないよう警告する意図があるのかもしれない。

 現行ドクトリンにおいても、核保有国に支援された非核兵器国がロシアを攻撃した場合、ロシアが先制核攻撃する権利が留保されているが、それは大規模紛争の場合だけだ。ロシアは、将来、米国やNATOがグルジアに介入するのを恐れており、先制核攻撃のシナリオを地域紛争にまで拡張する必要があるのだろう。

 ◆「3本柱」に不安

 第4に、ロシアは自国の「核戦力のトライアド(3本柱)」に不安を抱いている。「トライアド」とは、(1)戦略爆撃機(2)大陸間弾道ミサイル(ICBM)(3)潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)−の3本柱によって核抑止力を確保する核戦力の構成をいう。現在、ロシア空軍は事実上、核ミサイルを発射する能力を持たない。地上配備のICBMは米情報部に簡単に探知されるため、脆弱だ。

 残るはSLBMだが、ロシアは弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)やSLBMの開発で失敗を繰り返している。SLBMに関してロシアが抱える問題の多くは、旧ソ連時代、SLBMはウクライナで作られていた事実に起因する。ロシアの設計者は、SLBMの開発をほとんど一から始めなければならない。

 ロシアの核抑止力は、潜水艦の艦隊と搭載ミサイル(SLBM)の絶えざる問題によって弱体化しており、当局者は危機感を募らせている。この脆弱性に対処する方法の一つは、新ドクトリンが示唆するように、先制核使用の条件を引き下げることだ。

 核抑止の効果は、何が核使用の引き金を引くか、疑念が増すにつれて高まる。理論的には、敵がどのような条件で核オプションに訴えるか不透明なとき、そのような国と紛争を起こすことにどの国も慎重になるだろう。ロシアの核ドクトリン改訂の背景には、このような理論があるとみられる。

 ロシアのアナトリー・ノゴビツィン参謀次長は昨年12月、「核兵器の潜在的な使用に関する新軍事ドクトリンは秘密にされるだろう」と述べた。これを正当化する理由は、どのような脅威の水準、どのような紛争シナリオがロシアの核の引き金を引くか、仮想敵国に分からず、敵国はロシアとの紛争を避けようとするからだ。

 しかし、いまやロシアの新軍事ドクトリンのすべてが公表されるのは明らかだ。ロシア政府は、核使用条件の緩和を広く宣伝することで、潜在的な敵国に直接警告を発するほうを選ぶだろう。

                   ◇

 ≪結論≫

 ロシア当局者は、国際的に同国が弱体化しているとみられるのを懸念している。今後数年のロシアの軍事力を考えると、この恐怖心は現実に根ざしているといえる。潜水艦・SLBM開発問題と相まって、軍は近代化への転換過程にあるため、ロシアの核抑止力への信頼は揺らいでいる。近い将来、大規模紛争を乗り切る余裕がないロシア政府は、核兵器の使用条件を緩和し、紛争を起こすまいとメッセージを送っている。

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