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翻訳家・徳川家広 次なる資産バブルの抑止へ

2008/10/22

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【プロフィル】徳川家広
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 とくがわ・いえひろ 慶応大経卒。ミシガン大経済学修士、コロンビア大政治学修士。国連食糧農業機関(FAO)に勤務後、2001年から日本でフリーの翻訳家として活動。訳書に『ソロスの警告』(講談社)など。43歳。東京都出身。
【プロフィル】徳川家広

 とくがわ・いえひろ 慶応大経卒。ミシガン大経済学修士、コロンビア大政治学修士。国連食糧農業機関(FAO)に勤務後、2001年から日本でフリーの翻訳家として活動。訳書に『ソロスの警告』(講談社)など。43歳。東京都出身。

 ■「美徳社会」の再構築急げ

 世界を揺さぶった金融危機だが、すでにいちおうの終息に向かいつつあるように思われる。イギリス首相が公的資金を使って銀行に資本注入を行う旨を宣言したのを皮切りに、ヨーロッパ諸国でも、市場原理主義の総本山アメリカでも、資本注入と預金の全額保護を柱にした対策が次々と打ち出されている。金融システムの全面崩壊を阻止する筋道は、すでに立っている。

 ≪繰り返される崩壊≫

 問題は、この後だ。今回の金融危機が、サブプライムと称されるアメリカの劣悪住宅ローン債権がアメリカの巨大住宅バブルを追い風に、世界中の金融機関、機関投資家によって大量に吸収されたことに端を発していることは、今では誰もが知っている。だが、その住宅バブルの背景となったのは、20世紀末にやはりアメリカで発生したハイテクバブルの崩壊だった。バブル崩壊を食い止めようとして、9・11同時多発テロをきっかけに、別の、さらに馬鹿げたバブルを産み落としたのが、この十年近くのアメリカの金融政策だった。

 実は今回の一連の救済措置は、「バブルがはじけた。次のバブルを早く用意しよう」という21世紀初頭の政策手法を、さらに大規模に行っているだけのことである。国際金融システムは救われたかもしれないが、その結果として銀行の資本と預金の総額が、バブルの最盛期と変わらない水準に保たれるわけで、貸出資産の総額も、バブル時の水準に回帰せざるをえない。つまり、じきにバブルが戻ってくるのである。そして、その彼方(かなた)には、次なるバブルの崩壊か、ハイパーインフレが待ち受けている。

 バブル崩壊後にとるべき、他の方向性は、ありえないのだろうか? 何も救済措置をとらず、バブルで高騰した資産価格を、下落するにまかせるというのはどうだろうか? 資産価格を「健全」な水準に戻すのである。

 一見正論に思えるが、これだと仮に資産価格が不健全に高い状態から健全なところまで戻っただけだとしても、不健全に高い値段の資産を担保として融資を行った銀行は、不良債権を抱え込まざるをえない。そして不良債権だらけの銀行を破綻(はたん)させれば、バブル価格の資産を裏付けに発生した「余分な」信用も抹消されるが、同時に、個人の預金も大幅に毀損(きそん)されることになる。政治的には、大問題である。それがわかっているからこそ、各国政府は今回、大慌てで金融システム救済を行っているのだ。

 ≪勤倹貯蓄の思考で家計運営≫

 では、下落してしまった資産価値の水準まで、預金を減らすというのは、どうだろうか? バブルで高騰した資産価値を担保に発生した余剰資金を凍結し、場合によっては税金で吸い上げるのである。荒療治だが、銀行破綻よりはましだろう。だが、これは銀行破綻が避けられ、結果として非常時がもたらされないために、いっそう政治的反発が激しいだろうから、事実上、実行不能と考えるべきだ。

 となると、考えるべきは、次なるバブルの発生を、どうにかして抑止することだろう。それには、資産価格の上昇を原動力とする経済運営を、まずは控えることだ。借金と投資ポートフォリオから、勤倹貯蓄へと、家計運営の思考を変えなくてはならないのである。

 だが、そうなるには、各国国民の大多数が、真面目に働けば生活水準が向上し、安心して引退できると確信しなければならない。今となっては古臭く感じられるような美徳が意味を持つ社会を、再構築しなければならない。それには政治家たちも遮二無二小さな政府を目指すことや、後先を考えずに規制を撤廃することを、ひとまずは止して、10年後、20年後の日本社会について、夢物語ではない、実現可能なヴィジョンを語るべきである。

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