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みずほ信託銀行社長・野中隆史 「信託」を活用した新商品開発

2009/8/28

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■のなか・たかし 東大経卒、1975年富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。2004年みずほ銀行常務執行役員、07年同副頭取を経て、08年6月から現職。57歳。群馬県出身。
■のなか・たかし 東大経卒、1975年富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。2004年みずほ銀行常務執行役員、07年同副頭取を経て、08年6月から現職。57歳。群馬県出身。

 ■農地信託で次世代に継承

 世界に誇る日本の製造業。「メード・イン・ジャパン」が高品質の証しとして世界中に浸透したのは、お客さまのニーズに対する開発者たちのこだわりであり、あくなき挑戦の結果であった。一方、「目に見えず、手にさわることのできない」商品を扱う金融機関にとっては、新商品を形にしにくい。独創的な商品を開発したくても、業法的な制約も多い。結果として、ほとんど金融業界横並びの新商品程度しか生まれず、個性豊かな商品開発といったものからは、ほど遠い現実がある。

 ◆手数を多くスピード感を持って

 私が商品開発の担当だったときに最初に実行したのは、「日本人の国民性、ユニーク性」を思いつくままホワイトボードに羅列することであった。商品開発には、徹底したマーケティングが重要で、お客さまのニーズや特性の研究なくして、商品開発はあり得ないといえる。書き出された「日本人の国民性、ユニーク性」は、「1億総中流意識」「皆で渡れば怖くない」「世界で最も英語ができない」など、ホワイトボードにすき間がなくなるくらいとなったが、そうしたプロセスが商品開発の第一歩となるのである。

 ヒット商品を作り出すには、上司として開発担当者の失敗を許す度量が必要である。失敗を許さずして、独創的なアイデアは生まれない。勝負事に例えれば、3戦全勝を目指すのではなく、同じ3つ勝ち越すのであれば、むしろ9勝6敗を目指すべきである。

 すなわち、6敗することを上司として覚悟することが肝要であり、その代わり手数を多く、すなわちスピード感を持って取り組むことが重要となる。そうすれば、失敗案件も手遅れにならないうちに変更または手仕舞うことが可能となる。

 私は、信託銀行における商品開発の可能性に大いに期待している。交通事故被害者の介護費用を定期的に支払う仕組みの保険金定期払い信託、従業員の退職時に自社株を渡す仕組みの株式給付信託などが当社の最近の新商品であるが、今後も「信託らしい、信託ならではの商品」を開発していきたい。

 ◆所有と経営を合理的に分離

 現在、私が興味を持っているのが「農地信託」である。わが国の農業の衰退に歯止めがかからない。GDP(国内総生産)に占める農業の割合も、昭和30年代の10%から1%に低下し、食料自給率も先進国最低の40%程度しかない。農業衰退の理由は2つあると考えられる。もうけにくく、ビジネスとして成り立ちにくい産業であるという点と、農業に雇用のノウハウがなく、就農人口が減少の一途をたどっているという点である。

 そこには、1947(昭和22)年の農地改革で自作農主義が徹底され、農家以外の参入が排除されてきたという歴史的背景がある。政府も問題を認識し、農業法人の設立規制緩和などさまざまな施策を講じてはいるものの、反転の兆しは見えない。わが国には肥沃な土地と豊富な水資源があり、本来は農業も国際競争力のある産業であって然るべきなのだ。

 全国には70万ヘクタールに及ぶ休耕地があるといわれている。しかし、就農を望む者にとっての最大の障壁は、何と農地の確保だというから、矛盾する。現在の農地法では、信託銀行に農地の受託が認められていないが、信託銀行の財産管理機能を用いれば、農地の所有と経営を法的かつ合理的に分離できる。

 私は群馬県の農業地区に生まれ育った。日本の農家の土地に対する愛着は深く、自分の土地を手放すことや、信用のない相手に貸与することを嫌う。農地信託を利用できれば、高齢化した多くの休耕農家も大切な農地を安心して若い世代に託せるのではないだろうか。これからも、信託機能を農業振興へ生かす道を探っていきたい。

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