吉越事務所代表・吉越浩一郎 日本発展の原動力「勤勉性」
2009/10/15
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■あとはトップの実践力次第
6月下旬から約3カ月間、南仏にある妻の実家を拠点に、ヨーロッパで生活していた。日本を離れて暮らすたびに、普段は見過ごしてしまうような日本の、あるいは日本人の優れた面や独自性などに改めて気づかされる。
◆フランスのサービスレベル
概してサービスとは、相手の立場になって求められているものを提供していくことを意味するはずである。理由は何であれ、その相手の立場に立てない、立とうとしないフランス人が提供するサービスには、その質の面で当然、日本との大きな格差が生じる。
一例を挙げれば、南仏の居宅に接続されているインターネット回線のレベルが何年間も一向に改善されない。回線がつながれば運がよく、駄目ならつながるのを待つ以外に方法はない、そんなレベルである。
理解し難いのは、基本料金とは別に、追加料金を支払うと特別な電話番号がもらえ、延々と電話口で待たなくてもよいという料金システムがあることだ。日本人の感覚からすれば、まさに“盗っ人たけだけしい”というほかない。
こういったサービスの質の差こそ、日本が国として今後も発展できる原動力になり得るのではないだろうか。そして、この労働力の質の違いは、「思いやり」を具現化できる「勤勉性」、言い換えれば、日本人が得意とする“真面目さ・努力・がんばり”によるところが大きいのだと思う。
一方、日本が欧米諸国にかなわないのが、都市の景観に対する美意識である。7月に訪れたスペイン・バスク地方のサン・セバスチャンという町の旧市街はにぎわっていたし、大変美しかった。町を囲む丘陵を利用して意識的にゆったりと創(つく)り上げた景観は、日本人の発想ではまず考えられない。
自然に恵まれた熱海を、現在のような町並みにしてしまう。来日した外国人たちから悪評が高い電信柱もまた然(しか)り。都市の景観を損ねる電信柱をこれほど徹底して利用する先進国はほかにない。技術立国として名をはせる日本が、なぜ電信柱利用にこだわるのか、日本人にも分からない以上、外国人には理解できないはずである。
◆指導者の英断で状況は変わる
都市の景観の良しあしは、開発に携わる組織トップの資質レベルに左右される。開発や整備が始まる段階に、景観よりもコストなどの問題がある程度まで優先されることは致し方ないが、やがて相対的に景観が損なわれることの方が問題だと認識される時点がくるはずだ。その時にトップが英断を下せば、手は打てるのである。
19世紀のフランス・パリ改造にかかわったジョルジュ・オスマンのように、都市開発に限らず、あらゆる組織のトップには現状を打破し、改革へ向かう姿勢を貫くことが要求される。
しかし、日本では多くのトップが、「やっとトップになれたのだから、危険を冒してまで現状を変えたくない」と保身に走る。それ以前に、トップになることを目標にしてきたような人には、実際にトップたる資質や能力が備わっていない場合が多い。
本来、“誰よりも仕事ができること”がトップ人選の最低条件になるべきだが、そのスクリーニングが機能していない。トップが現場に立ち、すぐに結果が出る仕事を率先して遂行しようとしない組織は、比喩(ひゆ)的な意味でも、“町の景観を醜くしてしまう”のである。
政治も企業経営も基本は同じ。このほど誕生した新政権には、日本人の強みである「勤勉性」を正しい方向へ活用しながら、自らも腕まくりして現場の仕事を積極的にこなしていくような、実践的なリーダーシップの発揮を期待したい。
◇
【プロフィル】吉越浩一郎
よしこし・こういちろう 1972年上智大外国語学部卒。極東ドイツ農産物振興会などを経て83年トリンプ・インターナショナル(香港)入社、86年からトリンプ・インターナショナル・ジャパンに勤務。92年から社長、2006年退任。61歳。千葉県出身。
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