「きぼう」本体、宇宙へ 星出彰彦さんが挑戦 「日本のための」飛行
2008/5/31
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| ケネディ宇宙センターで行われた打ち上げ訓練で宇宙服のパラシュートを調整する星出彰彦さん(NASA提供) |
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■実験室と専用アーム設置
今回の飛行は、米スペースシャトル史上初めて、作業のほとんど全部がきぼうに関連する「日本のための」飛行だ。
米国人飛行士による3回の船外活動も、きぼう設営の一環。星出さんは、きぼうの中核施設である船内実験室を、ロボットアームで国際宇宙ステーションに取り付ける大役を担う。実験室は、きぼう専用のロボットアーム付き。今回の飛行で、きぼうの本格運用に向けた準備がほぼ整う。
作業の全体像は大まかに言えば、実験室をステーションに結合させ、3月のシャトル飛行で土井隆雄さん(53)が仮設置した保管室を、最終的な位置に取り付けることだ。実験装置の設置と動作確認もし、試料さえ届けばいつでも実験を始められる態勢を整える。
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| 5月3日、ケネディ宇宙センターで発射台に移動するスペースシャトル「ディスカバリー」(NASA提供) |
通信システムが組み込まれた実験室が設置されたことで初めて、日本国内から直接、きぼうへの指令を送ることが可能になる。5日目には、宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センター(茨城県つくば市)から実験室へ最初の指令を発信し、2つある電気系統の1つを起動させる。
次いで星出さんも実験室の中へ。ステーションの結合部を経由して、先の飛行で運んだ保管室内のコンピューターや実験装置を、実験室に「引っ越し」させる。
実験装置は最終的に7種類になる予定だが、現在保管室にあるのは「細胞培養装置」と「流体物理実験装置」など6つ。残る1つは、日本が新たに開発する無人補給機「HTV」で運ぶ計画だ。
その後、2つ目の電気系統と、専用ロボットアームを起動させる。アームの作動試験も飛行の後半に行う予定だ。
仮設置した保管室の移設は、星出さんの同僚飛行士がステーションのロボットアームを使って行う。きぼうはこれで完成形に大きく近づき、来年春に予定される第3便の船外実験装置の到着を待つばかりとなる。
ディスカバリーは順調にいけば、15日午前0時すぎ(日本時間)、ケネディ宇宙センターに帰還する。
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■少年時代の夢 強い信念で実現
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| 星出彰彦さんが「事故で死ぬことが多いけれど、宇宙飛行士になりたい希望は消えません」などと書いた、小学4年生当時の文集(父の星出寿夫さん提供) |
東京都生まれの星出さんは、商社マンだった父、寿夫さん(80)の仕事の関係で3歳から7歳まで米国で過ごした。父に連れられてケネディ宇宙センターに行き、「宇宙はかっこいいな」と胸に刻まれた。
寿夫さんによると、その後、絵を描けばロケットばかり。小学4年の文集には「宇宙飛行士になってみたい」「事故で死ぬことが多いけれど、それでもなりたい希望は消えません」と書いた。
あこがれが現実味を帯びるのは茗渓学園高校(茨城県つくば市)のころ。毛利衛さん(60)ら1期生の飛行士3人が決まった際「2期生を選ぶ可能性がある」との新聞記事を見逃さなかった。「将来、職業として飛行士が出てくるんだと、だったらそれを目指そうと思った」と語る。
慶応大理工学部で部活動のラグビーと流体力学の研究に励み、宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)に就職。エンジニアとしてH2ロケットの開発や先輩飛行士の若田光一さん(44)の支援に携わりながら飛行士を目指した。
1999年、古川聡さん(44)、山崎直子さん(37)とともに飛行士に選抜された。
閉鎖された施設で8人が1週間暮らす最終試験まで一緒だった受験仲間の男性(47)は、試験の課題だった真っ白なジグソーパズルを思い出す。うんざりする作業を、星出さんだけは試験が終了しても黙々と続け、ついに完成させたという。
努力家であることに加え、周囲の評価は「いつもにこにこしていて、コミュニケーション能力が高い」で一致する。中学、高校の同級生、柚木太さん(39)は「人間関係を誰とでも円滑に楽しく作れる人。宇宙でもいいチームワークを持てるはず」と太鼓判を押す。
今回の飛行について星出さんは「きぼうの保管室に実験室を増築し、実験できる環境を整えるのが仕事。今後の有人宇宙活動につながる経験を積んできたい」と語っている。
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■無重力生かす7種装置 高品質タンパク質の応用期待
きぼう船内実験室の外観は円筒形だが、内部はコンピューターなどさまざまな装置が組み込まれ、四角い部屋のようになっている。最終的には計7種類の実験装置が設置されるが、いずれも無重力という宇宙の特殊な環境を生かした装置だ。
地上では、熱によって液体の中に比重が異なる部分ができると、重い部分が下に、軽い部分が上に移動して対流が生じるが、無重力の宇宙ではほとんど起こらない。「溶液・タンパク質結晶成長実験装置」はこの性質を利用する。
溶液中のタンパク質が対流なしの状態で固まれば、きれいな結晶ができると考えられており、高品質のタンパク質をつくることで、構造を解析する研究や創薬への応用が期待されている。
きぼうで最初の実験に使われる予定になっているのが「流体物理実験装置」。液体などの不均一な表面張力によってできる、微小な対流の実験をする。
こうした対流は体内の血液や水分の動きに影響するため、研究は宇宙飛行士の健康管理にも役立てられるという。
「細胞培養装置」は微生物やさまざまな細胞を観察するための装置。培養容器を回転させれば地球の倍程度までの重力を人工的に発生させることができるため、異なる重力での生体の様子を調べることができる。
装置のほとんどは地上からの遠隔操作が可能。きぼうを運用する宇宙航空研究開発機構の足立昌孝主任は「最初のセッティング以外、飛行士の手をほとんど借りずに実験ができる」と胸を張る。
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