仏映画「情痴 アヴァンチュール」で主演 リュディヴィーヌ・サニエ

2007/4/6

 
 現在公開中のフランス映画「情痴 アヴァンチュール」(グザヴィエ・ジャノリ監督)は、フランスを代表する若手女優リュディヴィーヌ・サニエ(27)が、猟奇犯罪の鍵を握る夢遊病患者を演じる官能的で複雑怪奇なサスペンスだ。官能ミステリー「スイミング・プール」(03年)で日本でもファンを増やしたサニエ。本作でも、精神状態を不安定にするためあえて睡眠を拒否するといったハードな役づくりに挑んだ。(岡田敏一)

 ファッション業界で働くセシル(フロランス・ロワレ=カイユ)と、映像関係の仕事に就いているジュリアン(ニコラ・デュヴォシェル)の若いカップルは、パリのアパートに引っ越してきたばかり。楽しい生活が始まるはずだったが、ある晩、ジュリアンは、アパートの入り口で、うつろな目付きで窓越しに自分を見つめる裸足の若い女性ガブリエル(サニエ)を見つける。

 別の日の日中、子供と一緒にスーパーで買い物するガブリエルを見付け、跡をつけると彼女は向かいのアパートに住んでいた。しかし彼女は自分で手首を傷付けベッドで気を失っていた。彼女は夢遊病者だったのだ。彼女と親しくなったジュリアンは、彼女から恋人ルイ(ブリュノ・トデスキーニ)の尾行を依頼される…。

 ≪眠らずに夢遊状態≫

 演技派で知られるサニエだけに、役作りも並々ならぬ努力で臨んだ。

 「患者との接触は病院が拒否したので、夢遊病患者の発作などを紹介した英BBCのドキュメンタリーを見たり、精神科医への取材で基本的な役づくりを行いました」

 普通の役者ならこれで十分というところだが、彼女は「眠らないことであえて精神状態を不安定にし、自分を夢遊病患者に近い状況に追い込みました。危険な賭けでしたが、自分で自分をコントロールできないという夢遊病の状況を作り出せました」と明かす。

 「それでも昼と夜で別人格を演じねばならないのは挑戦でした。一つの映画で2人の人物を演じ分けるのですから…」

 「8人の女たち」(02年)でカトリーヌ・ドヌーブやファニー・アルダンら大ベテランと共演し、最年少ながら強い存在感を誇示した彼女だけに、こうした答えが嫌みに聞こえないところはさすが。

「情痴 アヴァンチュール」のワンシーン(東京都新宿区のシネマスクエアとうきゅう他で公開中)
「情痴 アヴァンチュール」のワンシーン(東京都新宿区のシネマスクエアとうきゅう他で公開中)
 
 ≪映画は仮想現実≫

 演技だけでなく業界を取り巻く状況などもシビアに観察している。

 「最近、夢や悪夢に関する映画が多い?。それは人間とメディア、テクノロジーとの関係が驚異的な速度で変化しているからよ。ネット社会の進展で世界は密接に結び付き、われわれはあらゆるものを所有したかのように振舞っていますが、それはあくまで仮想現実の世界で、実際われわれは何も所有していない。まさに夢であり悪夢だわ」

 「ピーターパン」(03年)では妖精ティンカー・ベル役に大抜擢(ばつてき)され、ハリウッドデビューを果たした。「約6000万人のフランス国民だけを相手にするフランス映画はまだ職人的な作品を作れるという特権を有しています。ハリウッドの娯楽大作が輸入されても、人目に付かない所で公開される小さな作品にもお金が回るのです」と客観的だ。

 「ハリウッド映画は不可能を可能にし、物事を善悪の2種類に分けてしまうけれど、フランス映画の大命題はリアリティーの追求なんですよ」とさらり。27歳の女優でなかなか言える発言ではない。「ドウモアリガトウゴザイマス!」とにこやかに去っていったが、今後、大物になるのは間違いなさそうだ。


【プロフィル】リュディヴィーヌ・サニエ
 Ludivine Sagnier 10歳のとき「夫たち、妻たち、恋人たち」で映画デビューする。その翌年にジェラール・ド・パルデュー主演の「シラノ・ド・ベルジュラック」に出演する。以後はテレビを中心に舞台などへも活躍の場を広げる。2002年のベルリン映画祭では「8人の女たち」(02年)でカトリーヌ・ドヌーブらとともに銀熊賞を受賞した。27歳。フランス生まれ。

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