映画「夕凪の街 桜の国」公開 佐々部清監督に聞く
2007/7/25
■生への感謝伝えたい
広島に原爆が投下されて62年。過去といまに生きる2人の女性を通して原爆の影響を描いたこうの史代さん原作のマンガ『夕凪(なぎ)の街 桜の国』が映画化され、広島で公開された。28日から東京、大阪など全国で順次封切られる。監督は「半落ち」「出口のない海」など情感あふれる秀作を生み出してきた佐々部清氏。作品の見どころや戦争に対する思いを聞いた。(近藤繭子)
−−原作を読んだ感想は
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| 【プロフィル】佐々部清
ささべ・きよし 明大文卒。映画やテレビドラマの助監督を経て、2002年「陽はまた昇る」で映画初監督。横山秀夫さんのベストセラー小説を映画化した04年の「半落ち」で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。49歳。山口県出身。 |
−−映画化する上で苦労したことは
「複雑と感じた時代や登場人物のつながりをどう映画で表現するか。映画はマンガと違って戻れない。だからこそ、丁寧に表現しないと原作の良さが伝わらないと思った。『夕凪の街』で登場する伊崎充則さんと『桜の国』の堺正章さんは、同じ石川旭を演じているが、マンガのキャラクターのように顔が似ているわけではない。どうすれば同じ人物に見てもらえるだろうか、観客が混乱しないように心がけた」
≪つなぐアイテムも≫
−−原作と違うところは
「原作を知っている人がこの映画を見ると、忠実に表現している作品だと思ってもらえるはずだ。ただ、時代をつなぐアイテムとしてアカシアの木を使ったり、命をつなげるために皆実(麻生久美子)から七波(田中麗奈)まで髪留めを受け継がせた。映画的には目で見える形で伝えることが必要だと思ったからだ。ラストシーンで七波に『この2人を選んで生まれてこようと決めた』というセリフを言わせるために、回想シーンに七波を登場させたのも映画的手法だ」
−−06年公開の映画「出口のない海」でも戦争を扱っている
「戦争については、学校の教科書で習ったことやテレビドラマなどで見た知識しかなく、みなさんとそう認識は変わらない。ただ、降旗康男監督の戦争映画『ホタル』に助監督として携わり、戦争を知らない若い世代にきちんと戦争を伝える映画を作るのはなんて志がいることなんだと意識させられた」
≪悲劇で終わらない≫
−−原爆を描いた作品は数多いが、被爆者の2世、3世が登場するのはめずらしい
「『黒い雨』『はだしのゲン』など悲惨な場面を切り取って強い意志で提示した作品はたくさんある。この映画も『夕凪の街』だけだと単なる悲劇で終わってしまうが、今もそれが脈々と理不尽につながっているということを描いた『桜の国』があることで、若い人たちが入りやすいのではないだろうか。原爆の投下から62年がたち、街の話から国の話になってしまうタイトルにも意味がある」
−−映画を通じて伝えたいことは
「人間、誰だって悩みや問題は抱えている。でも、皆実と七波に比べるとちっぽけなこと。生きることを渇望していたのに、理不尽に死んでいく皆実。被爆者の親を選んで生まれてきたんだといって、幸せになるためにしっかり前を向いて生きている七波。2人の姿を見ると今、生きていることに感謝できるのではないか。これは日本人にしか作ることができない映画で、日本人が見なきゃいけない映画。作品を見て、家族のこと、兄弟のこと、地域のこと、国のことを考えてもらえればうれしい」
◇
《物語》
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| 父親(堺正章)が大切にしている昔の写真を見る娘の七波(田中麗奈)(C)2007「夕凪の街 桜の国」製作委員会 |
皆実が26歳の若さで世を去ってから半世紀後。幼いころに疎開先で養子となった皆実の弟、石川旭(堺正章)は、娘と息子の家族3人で東京で暮らす。家族に隠れて夜に外出する父を心配し、後を追った娘の七波(田中麗奈)。広島にたどり着き、家族が背負ってきたものや自分自身のルーツに思いをはせる。


