「アヒルと鴨のコインロッカー」中村義洋監督
2007/7/31
■予想以上のヒット「しみじみ」
気鋭の人気作家、伊坂幸太郎氏の同名小説を映画化した「アヒルと鴨のコインロッカー」(配給・ザナドゥー)がスマッシュヒットを飛ばしている。恵比寿ガーデンシネマ(東京都渋谷区)では公開初日(6月23日)と2日目の興行収入が邦画の歴代ナンバーワンを記録し、今月21日から封切られた名古屋、大阪などでも予想を上回る盛況ぶりだ。巧妙に構成された原作を見事に映像化した中村義洋監督に撮影秘話などを聞いた。(島田耕)
−−原作を読んだ印象は
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| 【プロフィル】中村義洋 なかむら・よしひろ 1993年、大学在学中に撮影した短編「五月雨厨房」がぴあフィルムフェスティバルで準グランプリを受賞。大学卒業後、崔洋一、伊丹十三らの助監督として現場に参加し、99年に「ローカルニュース」で劇場映画デビュー。また、「仄暗い水の底から」「クイール」など話題作の脚本を次々と手がけるなど、脚本家としても高い評価を得ている。36歳。茨城県出身。 |
−−椎名(濱田岳)が大学入学のために仙台に来るところですね
「そう。仙台で1人暮らしを始める椎名をリアルに描写し、その後で少しずつドラマが始まっていく。伊坂さんの小説を読むのは今回が初めてだったのですが、この敷居の低さが良いな、って思いました。読み終わった後は感動でしたね」
−−実際に映像化する上で難しかったことは
「小説のトリックについては脚本で何とかなると思っていました。それよりも、この小説がなぜこんなに良いのか。感動の理由を見つけ出すために、原作を年表のように組み立て直して(その理由を)ひもとき、その(感動の)部分に向けて映画を作っていきました」
−−小説を映画化する場合、何かこだわりはあるのでしょうか
「原作に対して敬意であったり、共感するところがなければ、その仕事を引き受けることはないですね。原作がただ売れているから映像化するというようなことはありません。今回も小説のトリックを映像化する上で構成を変えざるを得なかった部分をのぞき、後はほぼ原作通り。伊坂さんの原作を通して言いたかったことは全くそぎ落としてないです」
−−仙台・宮城でのオールロケも話題となっています
「主人公は東京から仙台、そしてブータンから仙台にやってきた異邦人2人。撮影前に伊坂さんへの取材など5、6回は仙台に行きましたが、慣れないように、知りすぎないように心がけていました。それは“外から見た仙台”を撮りたかったからです。仙台の人からすれば、本当の仙台らしさは全然映っていないのかもしれません」
−−観客には何を感じてもらいたいですか
「映画を見終わった後に“すっきりした”で劇場を後にしてもらいたくないですね。伊坂さんも同じ考えなのですが、映画でも“どうなってしまうのだろうか”と観客一人一人がその続きを少しでも考えてもらえればと思っています」
−−東京都内では6月末に公開され、予想を上回る興行収入を達成。大きな反響を巻き起こしています
「作品に自信がなくて盛況となった場合は“良かった、良かった”で済みますが、この映画は二度と撮れないのではと思うほど良い作品で、真面目に取り組みました。だからといって大盛況が当然のことと思っているわけではないのですが、しみじみとうれしく、ホッとしています」
−−今後はどのような作品を撮りたいですか
「伊丹十三さんの映画を見て、僕は映画の世界を志したのですが、伊丹映画には3原則があると思っています。それは退屈させないこと、中身が濃いこと、そして映画に対する愛をかき立てることです。毎回この気持ちで映画の良さをわかってもらえる映画らしい作品を撮り続けていきたいですね」
◇
≪ストーリー≫ 大学入学のために仙台に越してきた椎名。ボブ・ディランの「風に吹かれて」を口ずさみながら片づけをしていると、隣人の河崎に声をかけられ、奇妙な計画をもちかけられる。同じアパートに住むブータン人の留学生・ドルジに広辞苑を贈るため、本屋を一緒に襲わないかという。この襲撃計画の裏には河崎とドルジ、そしてドルジの恋人で河崎の元彼女・琴美の3人の愛しくて切ない物語が隠されていた。
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| 「一緒に本屋を襲わないか」と河崎(瑛太)(左)に誘われる椎名(濱田岳)
(C)2006「アヒルと鴨のコインロッカー」製作委員会 |
椎名には濱田岳、河崎には瑛太がW主演。原作は「第25回吉川英治文学新人賞」、「2005年度『このミステリーがすごい!』国内編第2位」など数々の文学賞を受賞した。


