シナリオ公募の第6回アニマックス大賞 頂点に「タカネの自転車」

2007/9/13

 ■海外にも強敵 アニメ登竜門

 世界屈指の“アニメーション大国”といわれる日本。これからもそう呼ばれ続けるには、人材の発掘と育成が大切だ。そこでアニメ専門のCS(衛星通信)チャンネル「アニマックス」では、クリエーター志望の新人からシナリオを募る「アニマックス大賞」を実施している。第6回の受賞者が決定した。(谷口隆一)

 ≪応募3056作品≫

 「3056作品という応募。これは大変な数だ」。9月7日に東京・内幸町の帝国ホテルで開かれた「第6回アニマックス大賞」の授賞式で、審査委員長を務めたアニメ制作会社、エーワンピクチャーズの勝股英夫社長は応募数の多さに感嘆した。

 審査委員で、数々のベストセラーを持つ小説家の夢枕獏さんも「3000作から選ばれたのだから、受賞者は自信を持っていい」とたたえた。

大賞を獲得したタカマガハヤトさん(右)と審査委員長を務めたエーワン・ピクチャーズの勝股英夫社長=7日、東京・内幸町の帝国ホテル
大賞を獲得したタカマガハヤトさん(右)と審査委員長を務めたエーワン・ピクチャーズの勝股英夫社長=7日、東京・内幸町の帝国ホテル
 
 今回、頂点に立ったのはシナリオ作品「タカネの自転車」。新しい自転車を買ってもらおうとして、テストの成績が良かったと親にうそをついた少年に起こる不思議な出来事を描いたファンタジーだ。受賞者のタカマガハヤトさんは「自分が子供のころに楽しんだような、子供が見て感じてくれる作品にしたかった」と思いを語る。

 この作品を審査で一押ししたという漫画家の荒木飛呂彦さんは「世界観に引きつけられた」と話す。「人間の普遍的な内面を描いていて、一般の人に分かりやすい」。もらえるはずだった兄の自転車が壊れてしまい、兄がうそをついたせいだと怒る妹と兄との関係は「妹ばかりがかわいがられているように感じた自分の心情に重なる」と荒木さん。「アニメ化にあたっては、そんな嫉妬(しっと)めいた暗い感情も描いてほしい」と注文する。

 ≪1年かけ制作≫

 アニマックス大賞を主催するアニマックスブロードキャスト・ジャパン(東京都港区)は、1998年からアニメ専門チャンネル「アニマックス」を運営している。

 大手アニメ制作会社の出資を仰ぎ、人気作品を数多く放送しているが、「自社でもアニメ界の底上げにつながることを」(滝山雅夫社長)と、オリジナル企画を募集するアニマックス大賞を2002年からスタートさせた。毎年、テーマを決めてシナリオを募り、優秀作品を1年ほどかけてアニメ化して放送する。

11月にテレビ放送される「ゆめだまや奇談」。「第5回アニマックス大賞」で大賞に輝いた作品だ
11月にテレビ放送される「ゆめだまや奇談」。「第5回アニマックス大賞」で大賞に輝いた作品だ
 
 06年開催の第5回で大賞を獲得した「ゆめだまや奇談」は、「攻殻機動隊」で知られるプロダクション・アイジーが制作中で、今年11月に放送予定だ。1回限りの人材ではなく、アニメの世界に長く貢献してくれそうな人を探しているのも特徴。2回目の受賞者は、「エルゴプラクシー」の脚本に参加して現場で働いている。

 夢枕さんも「これがスタート。息の長いマラソンのように、継続していくことで力になる」と、すべての応募者にこれからも実力を磨いてほしいと訴えた。

 制作に当たるエーワン・ピクチャーズでは「いくつか浮かぶ絵がある。スタッフの選定作業を進め、絵コンテや作画を行い、1年で完成させたい」(勝股社長)と意気込む。TBS系で放送されて大評判となっている、高校野球がテーマのアニメ「おおきく振りかぶって」を手がけ、心情描写に優れた力を見せているアニメスタジオだけに、「タカネの自転車」も期待できそうだ。

 ≪第二の浮世絵?≫

「受賞者は自信を持っていい」とエールを送る審査委員で小説家の夢枕獏さん(上)と、大賞受賞作品を絶賛する漫画家の荒木飛呂彦さん
「受賞者は自信を持っていい」とエールを送る審査委員で小説家の夢枕獏さん(上)と、大賞受賞作品を絶賛する漫画家の荒木飛呂彦さん
 
 才能は海外にも。アニマックス大賞では第6回から韓国、香港、フィリピンなどアジア圏の10の国と地域に募集地域を拡大した。3000作のうち、2000作が海外からの応募。大賞は逃したものの、6作品が最終選考に残って日本からの6作品と並んで審査を受けた。

 海外からの応募作品を読んだ夢枕さんは「日本を意識しすぎたストーリーやテーマが多かった」と感想を話す。荒木さんも「日本アニメの影響を強く受けているようだ。浮世絵が欧州の絵画にいろいろと影響を与えたように、日本アニメの影響が及んでいる印象を受けた」と指摘する。

 ただ「世界観は持っていても、キャラクターがやや弱かった」と荒木さん。夢枕さんも「インドの作品なのに、日本が舞台になっていたりする。なぜ『ラーマーヤナ』(古代インドの長編叙事詩)をやらないのかと思った」と苦笑する。「日本はインドも中国も欧州についてもそれなりに理解できる。これからは自分の国のことを描いても良いのでは」と次回以降の応募者に呼びかけた。

 5回目からの受賞作はアジア圏の27カ国・地域で放送される。これを見た海外のクリエーターが、オリジナル企画をより多く応募してくるようになれば、集まる作品数もさらに増え、アニメの世界に一段の広がりが生まれそうだ。

フジサンケイビジネスアイの購読のお申し込みはフリーダイヤル0120-46-3150