手塚治虫氏、生誕80周年記念 イベントてんこ盛り

2007/12/11

 ■演劇やミュージカル、名作が続々…

 “漫画の神様”とたたえられ、没後20年近くがたっても根強いファンを持つ手塚治虫。1928年11月3日の誕生から来年が80周年となることから、これを記念したイベントや企画が繰り広げられている。近くでは12月20日から「劇団スタジオライフ」による公演「アドルフに告ぐ」が舞台化の第1弾としてスタート。来年3月からは「劇団わらび座」によるミュージカル版「火の鳥」も始まるなど、幅広い分野で手塚治虫がよみがえる。(谷口隆一)

 「漫画がこんなに人の心を揺り動かすのなら、自分でも描いてみたいと思い漫画家になりました」

舞台「アドルフに告ぐ」の製作発表会で手塚さんの思い出や作品の魅力を語る演出家の倉田淳さん(左)と漫画家の浦沢直樹さん(中)、萩尾望都さん(右)=4日、東京・半蔵門のTOKYO FM HALL
舞台「アドルフに告ぐ」の製作発表会で手塚さんの思い出や作品の魅力を語る演出家の倉田淳さん(左)と漫画家の浦沢直樹さん(中)、萩尾望都さん(右)=4日、東京・半蔵門のTOKYO FM HALL
 
 12月4日に「TOKYO FM HALL」で開かれた「劇団スタジオライフ」による手塚作品「アドルフに告ぐ」の舞台化発表会。その席上で、「トーマの心臓」「11人いる」など数々の名作を発表してきた漫画家の萩尾望都さんは、手塚さんの作品から受けた影響の大きさを話してくれた。

 少女漫画界の草分けとして、竹宮恵子さんや大島弓子さんらと並び大勢のファンを持つ萩尾さんでも“偉大”と仰ぐ存在。「手塚先生の作品を読んで、漫画は何でもできる、漫画の道に不可能はないと感じた」と、少年向けに限らず少女漫画や青年漫画でも活躍した手塚さんのすごさに敬意を示した。

 「5歳くらいの時に『鉄腕アトム』と『ジャングル大帝』を暗記するほど読んだ」のが出会いだったと話すのは、その「鉄腕アトム」を新たな形で描き直してた「PLUTO(プルートゥ)」を発表している漫画家の浦沢直樹さん。「酸いも甘いも善も悪も、いろいろなことが人間の中にはある。そういう人間の根源を表現していた」と、手塚作品が持つ人間性の強さを指摘し、「生きる力、バイタリティを次の世代に伝えていきたかったのでは」という手塚さんの“遺志”を今に受け継ぎ、ペンを取る。

 「アドルフに告ぐ」を上演する「劇団スタジオライフ」は、男性ばかりの俳優で構成された“男性版・宝塚”として知られ、過去に萩尾さんの「トーマの心臓」など、数々の漫画作品を舞台化して話題を集めてきた。手塚作品については今回が初挑戦で「お願いしてみたところ、80周年記念の事業として認めていただいた」と、劇団唯一の女性で演出家の倉田淳さんは喜ぶ。公演は12月20日から30日まで、東京・天王洲にある「銀河劇場」で開催。回によっては出演者によるトークショーも行われる。

 「アドルフに告ぐ」は、83年から85年まで「週刊文春」に連載された漫画。アドルフという名を持つドイツ人とユダヤ人の幼なじみの少年2人が、同じくアドルフの名を持つヒトラーの台頭に巻き込まれ、敵対していく。差別の醜さや戦争の残酷さが描かれた、手塚作品でも屈指のメッセージ性を持った作品だけに「手塚さんの『アドルフに告ぐ』を演じる意味を考え、舞台で共有できたら幸せ」(倉田さん)と、舞台化への意気込みにも力がこもる。

 手塚さんの数ある作品でもライフワークとして描き続けられたのが「火の鳥」だ。秋田県仙北市に本拠を置く「劇団わらび座」ではこの「火の鳥 鳳凰(ほうおう)編」をミュージカル化。3月28日の「パルテノン多摩」を手始めに、新宿や鴻巣などで上演する。東大寺の大仏建立が行われた奈良時代を舞台に、2人の仏師が権力に翻弄(ほんろう)されながらも、創作に打ち込む姿を描いてシリーズ中でも最高傑作と名高い「鳳凰編」。日本の風土を表現した舞台を得意とする「わらび座」によって、奈良時代に生きた人々の情念が舞台の上によみがえる。

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 ■自分だけの単行本制作 好きなエピだけ満載

「やわらか戦車」と「鉄腕アトム」が「合体」して生まれた「やわらかアトム」。ネット上のアニメーションとして公開されて大人気に。
「やわらか戦車」と「鉄腕アトム」が「合体」して生まれた「やわらかアトム」。ネット上のアニメーションとして公開されて大人気に。
 
 舞台化以外でも手塚治虫さんの生誕80周年記念事業は各所で展開されている。「手塚治虫オンデマンド・マガジン」は手塚さんの漫画全集から好きな作品をエピソード単位で選んで、自分だけの単行本を制作できるサービス。浦沢直樹さんやSF作家で手塚さんと親しかった小松左京さんがセレクトした単行本も購入できる。「手塚治虫モーション・マガジン」というのもあって、こちらはパソコン上で簡単な動きや音声によるセリフ、効果音がつけられた手塚作品を鑑賞できる。

 手塚作品を題材にした展開は他にも多々ある。浦沢さんの「PLUTO」はその代表例。手塚さんが作品に込めた思いを掘り起こし、自分ならではの解釈を添えて漫画化している。ファンワークスが展開しているのは「やわらかアトム」。ネットで人気になったアニメ「やわらか戦車」を「鉄腕アトム」と“合体”させた異色の企画だが、組み合わせの意外性とキャラクターのかわいらしさが相まって、じわじわと支持を広げている。

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