不屈の冷凍食品 ギョーザ事件前に回復

2008/5/21

製造工場の所在地を表示し安心をアピールするスーパーの冷凍食品売り場=大阪市浪速区のマックスバリュ難波湊町店
製造工場の所在地を表示し安心をアピールするスーパーの冷凍食品売り場=大阪市浪速区のマックスバリュ難波湊町店

 ■安全対策奏功、国内製が牽引

 1月30日に発覚した中国製冷凍ギョーザ中毒事件で冷え込んだ冷凍食品の売り上げが、回復の兆しをみせている。発覚直後は半分近くにまで激減したが、4月には一時、発覚前の水準を上回った。お弁当需要が膨らむ行楽シーズンの追い風に加え、メーカーや流通各社の安全・安心対策が奏功し、消費者の冷食離れに歯止めがかかりつつある。「冷食は生活必需品」との声は根強く、少子高齢化で日本人の胃袋が縮小するなか、冷食の成長力を改めて見せつけた格好だ。(佐藤克史、松岡朋枝)

 ≪行楽シーズンも追い風≫

 「国内製造の商品に限れば、5月に入ってからの売り上げは前年の2倍に達している」

 大手スーパーの売り場担当者は、消費者の冷食回帰を実感している。

 事件発覚を受け、イトーヨーカ堂やダイエーなど大手スーパー各社は、自主企画のプライベートブランド(PB)の冷食について、製造工場の所在地や材料の原産国を売り場で表示するなど、消費者の不安を払拭(ふっしょく)する取り組みを続けてきた。

 こうした対策の効果もあり、外出機会が増える春先から、「国内工場で製造されたものなら安心」と、冷食を買い込む消費者が増えているという。

 財団法人「流通システム開発センター」の全国約250店を対象としたPOS(販売時点情報管理)データによると、冷凍野菜を除く冷凍食品の週間売上高は、事件発生翌週の2月4〜10日に3118万円と、発覚前の1月21〜27日の5563億円に比べ約44%も減少した。

 しかし、その後は、週ごとに変動はあるものの、順調な回復基調をたどっており、4月14〜20日には5936億円と、発覚前の週の売り上げを上回った。行楽需要がピークとなるゴールデンウイーク後も、回復基調は続いており、5〜11日には再び5000万円台を回復している。

 同センターでは「毎日、子供のお弁当を作っているお母さんたちが、国内製の購入を再び買い始めたことがきっかけになった」と指摘する。

 もっとも、回復は国内製が牽引(けんいん)しており、中国製商品は、相変わらず苦戦している。国内製についても、使用している材料の原産国表示は義務づけられておらず、中国産野菜などを使っている商品は多い。消費者の不安が完全に払拭されたわけではない。

 ニチレイの村井利彰社長は「自動車部品と同じように(中国産材料が)組み込まれている。国産材料だけでは今の価格は維持できない」と苦しい胸の内を明かす。

 手軽でおいしい冷凍食品は、日本の食生活に浸透し、欠かせない存在となっている。最近の消費者調査でも「自分で作るものよりおいしいものがある」と支持する声は多い。

 ≪「使わずにはいられず」≫

 「事件直後でも『代替品はなく、使わずにはいられない』と話す主婦が多かった。事件の騒動で敬遠していたが、時間がたち再び買い始めた」

 家庭の食生活を研究しているアサツーディ・ケイの岩村暢子・200Xファミリーデザイン室長は、こう解説する。

 冷凍食品は、安くて大量の材料調達だけでなく、加工製造拠点としても、中国抜きでは成り立たないのが実情だ。このため、冷食メーカー各社は、現地生産工場の監視カメラの増設や検査センターの新設など、品質管理体制の強化に懸命だ。

 冷食市場の成長拡大は、中国製、中国産食品の安心・安全確保がカギとなる。

                  ◇

 ■大手4社増収へ/数少ない成長市場

 冷凍食品メーカー大手5社のうち中毒事件の原因となった製品を輸入販売していたJT(日本たばこ産業)を除く4社が、2009年3月期の業績予想で、冷食事業の増収を見込んでいる。中国製の不振は続くものの、好調な業務用や値上げの浸透でカバーできるとみているためだ。

 「家庭用は消費者の不信がまだある。上期は影響が残る」と予想するのは、ニチレイの村井利彰社長。

 各社の業績予想によると、事件の影響による減収は、JTの220億円を筆頭に、影響はないとする味の素を除く手4社の合計で375億円。営業利益でも計87億円の減益要因になるとみている。

 影響が大きいのが中国製の不振。取扱商品の1割を中国で製造していたマルハニチロホールディングス(HD)は、中国製の売上高が100億円減少すると予想。日本水産も、「問題が発生してから中国製の追加注文が入らなくなった」(佐藤泰久専務)と、25億円の減収を見込んでいる。

 それでも、JTを除く4社は増収を予想する。

 牽引(けんいん)役は事件発覚後も、堅調に推移している業務用だ。

 ニチレイは今期の業務用の売上高を前年比5・8%増の888億円と予想。家庭用の1・9%増を大きく上回る成長を期待している。日本水産も業務用売上高で4・3%増と、家庭用の0・5%増に比べ大幅な伸びを目指す。

 増収のもう一つの要因が、材料費高騰を受けた値上げだ。各社とも昨年末から今年にかけて値上げを実施。これまで特売の目玉と位置付けられ、激しい価格競争にさらされていた冷食の店頭価格を適正水準に引き上げることで、増収につなげたい考えだ。

 味の素は国内食品事業で403億円の増収を見込むが、うち3割の120億円程度を冷食で稼ぎ出す計画だ。中毒事件の逆風下でも、数少ない成長事業にかける各社の期待は大きい。


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