西日本高速道路会長CEO・石田孝 「いいことやろう」の新たな展開
2009/11/20
■企業は社会利益の最大化を
手前みそで恐縮だが、西日本高速道路は「いいことやろう西日本、社会に尽くそう西日本…」を合言葉に、社会に評価されるグループを目指している。旧道路公団の分割民営化に伴い誕生して4年になるが、この言葉がサービスエリア(SA)の売店・飲食店を含めて定着してきたと実感している。
今春から高速道路の土日祝日「1000円乗り放題」が始まって通行台数が増え、SAなど店舗の売り上げも大きく伸びた。景気低迷で街の商店が売り上げを落とす環境だ。企業努力がなかったとはいわないが、巨額の税金投入で実現した売り上げ増である。「天から小判が降ってきた」と手放しで恩恵を享受するわけにはいかない。
◆グラミン銀行に注目
わが社は、売店・飲食店の賃貸料などが増える分でSAの女性トイレ増設や段差解消などの設備投資を決めた。2年前に始めたお客さま還元セール(全商品2割引き)とは別に、6月から多くの店舗が自主的に特定日に割引サービスを打ち出し、テナントを含め社会還元する道筋もみえてきた。社会貢献では、SAなどの売店・飲食店を運営するテナントとともに年間2億円規模で産科医学生や海外で医療活動を行うNPO法人などを支援しており、強欲資本主義に対抗して次の一歩を踏み出す時期にきたと感じている。
そんな中で関心を持ったのが、2006年のノーベル平和賞を受けたバングラデシュのムハマド・ユヌス氏だ。同国で貧しい人たちのためのグラミン(村落)銀行を創立してマイクロクレジット(少額無担保融資)と呼ばれる金融を途上国に普及させた人物で、その着想と仕組みが面白い。
1974年にユヌス氏が飢饉(ききん)に苦しむ農村で女性に少額のお金を貸したのが原点という。女性は高利の金貸しから借りていたため、1日働いても収入のほとんどが利払いに充てられ、手元に残るのは2.5円だけ。ユヌス氏は法外な利子を払わずにすむ仕組みとしたことで収入が150円に増えたのだ。村にいた同じ境遇の42人にも少しずつお金を貸したところ、全員が貧困の悪循環から抜け出すきっかけになった。意外にも全員がきちんと返済し、担保を持たない貧困層を対象に少額を貸し付けるグラミン銀行の誕生につながった。
大事なのは、寄付など慈善事業ではなく、人の自助努力を促し責任と自立への意欲を高める融資ということだ。
◆利益は“腹八分目”に
この20年ほど、日本企業は「利益の最大化」を追求してきたが、経営者は今こそ近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」の理念を胸に刻むべきだ。企業は利益を腹八分目にして「社会の利益を最大化」すべく経営資源を使うことも考え始めてもいい。
こう考えているとき、隠岐島にある島根県海士町の挑戦に出合った。鎌倉時代に後鳥羽上皇が流されたことで知られる離島の町は合併ではなく自立の道を選んだが、国からの交付税が大幅に減るなど苦難に直面した。町長が活性化資金にするため、自らの給料カットを申し出ると管理職や町議、職員も報酬・給与カットに応じたという。
節減された経費は、島の産業振興や若者の移住促進策などに投資。魚介類の細胞を壊さずに取れ立ての味を保つ冷凍・解凍技術を採用し、東京や大阪などに販売する第三セクターを成功させた。これにより、多くのUターン、Iターン移住者を呼び込んだ。
このような地域の自主的挑戦に力を貸すことができないか。資金援助ではなく、地域自らの責任で自立し、農林漁業などで成功することをサポートする。それが日本の食料自給率向上などにつながれば「社会の利益の最大化」に貢献することになる。そんな活動が社会全体に広がっていく“一粒の麦”の役割を果たしたいと思っている。
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【プロフィル】石田孝
いしだ・たかし 1966年神戸製鋼所入社。取締役、専務執行役員都市環境カンパニー執行副社長を経て、コベルコ建機社長。2005年10月から現職。06年6月から西日本高速道路サービス・ホールディングス会長CEO兼務。09年7月西日本高速道路技術本部長兼務。66歳。福岡県出身。
